食べ物レポート, 旅をする

駅前の「駅前」 再訪

西武秩父駅前にある居酒屋「駅前」を再訪した。昼のみの営業だそうで、午後早い時間に訪れてみたら、店主はお昼寝中だった。暖房の効いた店内は、確かに昼寝をするには絶好の条件だった。他の客もいないので、あれこれ話をしてしまったのだが、元々はお姉さんがやっていた定食屋の後を継いで、常連中心の居酒屋にしたそうだ。現在は秩父の山登りをしにきたグループやゴルフに行った帰りに立ち寄る客がほとんどで、だいたい予約をして来るらしい。だから、ふらりと一人で入ってくる客が珍しかったそうだ。メニューは壁に貼っているものだけで、テーブルには何も置いていない。壁に目をやりながら今日は何を食べようかと考えていたら、店主自らお通しセットをお勧めして来るので、そのまま言われたものを食べるのも良いかと思った。

お通しは六品で、全て一皿100円だという。消費税込みで660円と実に丁寧な説明だった。予約して来る客でも、このお通しだけでちびちび酒を飲む人が多いらしい。野菜中心の組み合わせだが季節によって出るものは変わるそうだ。枝前やこんにゃくを食べながらちびりと酒を飲んでいた。お通しの次は何か注文しなければいけないかと思ったのだが、それは無用な心配だった。
次のお勧めが登場した。フキノトウは好きかと聞かれ、全く問題ないと答えると、「酒の肴にもなるきのこ汁」が登場してきた。店主曰く、この時期の山のものらしい。進められたきのこ汁の上に、パラパラとかかっているのがフキノトウだった。フキノトウと聞かれた時には、春の山菜天ぷらなどを進めてくれるのだろうと思っていたので、これは随分な変化球だった。フキノトウをスパイス的に使うのは面白いアイデアだ。

きのこ汁を食べていると、今度はセリの束を持ってきて、これから茹でるのだが、セリのおひたしはどうだと聞かれた。では、お願いしますというと、これは追加のお通し扱いらしく一皿100円と言われた。ただ、そのセリの束を茹でるとほとんど小皿一つ分にしかならないらしい。いや、これで商売大丈夫かとちょっと心配してしまった。

セリを食べ終わる頃にまた声をかけられた。柚子巻き大根を出したっけというので、それはなんですかと尋ねたら、また一皿100円だからとことわりのあと出てきたのが、大根の酢漬けを巻いたものだった。確かに、ゆずの香りがしっかりしている。

結局、野菜料理の小皿が8皿と酒の肴になるきのこ汁で腹がいっぱいになってしまい、当初注文する予定だった、山菜の天ぷらとか鳥料理にはたどり着けないまま、引き上げる羽目になった。この日は4時から予約が入っているということであり、その前には引き上げるつもりだったが、「今からだと15時29分の電車だね」などと電車の時間まで教えられてしまった。西武秩父駅の発車時刻は全て記憶しているそうだ。どうやら客との会話も、電車の発車時刻で調整するらしく、これは「駅前」の営業ノウハウだなと感心した。
走れば発車時間の3分前で大丈夫だ、などと教えてくれたが、余裕を持って15分前には店を出た。野菜で腹が膨れるというのも不思議な経験だが、あと何回通えば「肉料理・魚料理」に辿り着けるか、ちょっと心配になる。まるで修行をするようなお店なのだが、季節により出し物は変わるそうなので、肉を食べるには春の終わりぐらいにいけば良いかもしれない。夏は川魚だそうだ。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中