
Foodexは、食品業界の見本市みたいなもので、年に一度のお祭り騒ぎという認識をしていた。以前の会場は幕張メッセで、1日かけてわざわざ出かけるプチ旅気分を感じる展示会だった。それがコロナの間は中止になり、今回から東京ビッグサイトにお引越しとなった。幕張メッセに行く思いをすれば、ビッグサイトははるかに近い。おまけに残念ながらプチ旅気分はすっかり消滅してしまうから、(個人的には)ビジネスモードが著しく強まる。昔であれば大量の名刺を持ち、ビジネススーツに身を固め、いざ戦闘仕様で出撃という感じだった。
それに合わせてというわけでもないが、今回はすっかりピクニック気分で、服装もピクニックに行くような格好になり(歩きやすい格好が重要)、名刺は要求されなければ渡さないという、ビジネスパーソンとしては堕落し切った対応でよしとしている。会場で営業活動に励んでいる企業の方から見ると、あまり付き合いたくない不良客だろう。それでも、親切に話しかけてくれる営業担当の方たちには素直に感謝する。

ビッグサイトの正面を真面目にみたことがないなと気がつき、おもむろに写真を撮ってみた。そうすると、これは現代の神殿ではないかと感じてしまった。金儲けの神様たちが、ごっそりと集まっている、金ピカ族の神殿だ。だが、金儲けの話を横に置いても、かなり荘厳なデザインだったことに改めて感動してしまった。
やはり、普段の視点をちょっとずらして、立ち位置を変えてもの事を斜めから見直すという作業は必要だ。神殿詣で久しぶりにビジネスの基本を思い出したのだが、それにしては本人の自覚があまりに足りない。コロナの間にすっかりダメなビジネスパーソンに落ちこぼれてしまったようで…………… 無念だ。

展示場の館内は、驚くほど大量の人で溢れていた。入場券を手に入れるための行列もすごい。おまけに、こういうところではまさに人々の本音が見えると思うのだが、もはや行列に並ぶ人たちには「間隔を開けて並ぶ」という概念は無くなっていた。前の人との距離はピッタリと密着とまではいかないまでも、息のかかる距離しかない。
コロナは終わったのだ(人々の意識の中では)と改めて気付かされる。まだ世の中で一定の割合の方は、コロナ怖いと思っているはずだが、そういう人はこのような混雑する場所には出現しないだろう。結局、コロナが怖い人は自発的に「いつでもステイホーム」を実践するグループになる。大多数の一般人は、3年前の行動パターンに復帰する。完全復帰は、夏頃になるのだろうが。
そんなことを考えていたら、また一つ思いついた。識者と言われる人が最近よく口にする「社会分断」だが、それは他人に強制されるばかりではなく、自分で自発的に社会から分離する集団も存在するということだ。アフターコロナでは、「コロナ怖い」と「コロナは終わった」という二大勢力が軋轢と騒動を引き起こす。これが、最大のコロナ後遺症かもしれない。パンデミックは社会を分断し続ける可能性があるという学びだ。それが端的に現れるのが、マスク論争だろうとは容易に推測できる。
たまたま今は花粉の大量発生時期だから、マスクは必須な来場者も多いのだが、来年はマスクなしの開催になるだろうし、会場の中と外で来場者がどう変化するのかが楽しみだ。

会場内は撮影禁止だったが、写真を撮りたいほどの印象的な展示もなかったので、出展ブースの感想も特にない。良くも悪くも平凡な内容のブースが多かったのは、コロナ後に世の中がどう代わっていくのか様子を見ている感じだからだろう。
帰り際に「東京アンテナショップ」によって、ジョーク土産を買ってきた。「東京ばな奈」ではなく「おだいばばな〜な」なのが、なんともおかしい。さすが、オタクの聖地だけある。東京駅の土産物店では、ちょっと販売が難しそうだ。
ちなみに、中身のお菓子は、バナナ型の人形焼みたいなものでした。