
JR新宿駅東口、改札近くにある小体なお店は朝からビールが飲める。この店の向かいは立ち食い蕎麦屋で、そこも客はひっきりなしに出入りしている繁盛店だが、混雑度合いはこの喫茶店+ビールスタンド的な店の方が圧倒的だ。朝は喫茶店で午後は軽食、夜になると飲み屋に変わる三毛作と言えば良いのだろうが、実際は朝昼晩フルメニューで営業している、何でも屋と理解した方が良さそうだ。
ビールのつまみに出てlくるハムやソーセージは本格的でレベルが高い。だからなのか、夜に入ろうとして入れたことがない。いつ行っても満席で、「ああ、今日も入れなかった」を永遠に繰り返している感じがする。一度だけ、たまたま空いている席が見つかって入ったことがあるくらいで、入店確率は10-20年に一度だなと諦めている。
この日も、朝9時に店の前を通りかかったら、なんと3席も空いていたのですかさず飛び込んで席を確保した。朝に入るのはこれが初めてだった。(いつもは満席で諦めて、向かいの立ち食いそばにする)

このトーストとハム(サラミ)とゆで卵半分がセットになっているのが、モーニングメニューの一つだ。これに飲み物がついて、500円でお釣りが来る。たいへんリーズナブルなせいなのか、客層を見ると男女半々といった感じで、いかにも都会の忙しい人たち向けの店という雰囲気がある。店内を観察していると席の回転も早い。
ただ、このモーニングメニューにつける飲み物が定番のコーヒーだけではなく、しっかりビールも選べることだ。(ただし別料金)トーストを齧りながらビールを飲むと、何やらすっかり無頼な人になれるような気がする。

たまたまなのか、両隣の席が空いてそこに入ってきたのが外国人観光客だった。ここ最近、新宿の街を歩くと外国人観光客を見かける頻度が急増している。大袈裟に言えば、靖国通りや新宿通りを歩くと、すれ違う5人に一人は外国人観光客だと感じる。聞き分けられる言語だけでも英語、仏語は当たり前で、それに中国語が多い。急増した感があるのが韓国語で、なぜかアウトドアショップにやたら登場している。韓国でもキャンプがブームなのかと疑ってしまうくらいだ。ただ、誰も買い物はしていない。ただ見て回るだけのようだ。
薬局で解熱剤が中国人観光客に買い占められているというニュースを見たが、アウトドアグッズはそこまでの人気はないようだ。それはありがたいことだと思う。キャンプ用シュラフやテントが爆買いの影響で品薄ですなどと言われたら、うんざりしてしまう。


この店のメニューはあまりに多過ぎで、一つ一つ確かめるのも大変だ。おまけにモーニング、ブランチ、ランチと時間帯により細かくセットが変わる。唯一変わらないのがいつでも飲めるビールだ。いつも満席で諦めているのだが、しばらくは熱心に空席探しをしてみようか。その時にはフランクフルトソーセージと黒ビールでのんびりしてみようか。
あれこれ考えつつ、10分でモーニングを平らげ店を出た。すっかり気分は都会の忙しい人モードになっていた。そんなに急ぐ用事なんて、全然なかったのだが。周りの人に煽られるというのは、たまにあるものなのだ。コロナの間はすっかり忘れていた「都会のあわただしさ」だった。