
日曜午後のFMラジオ番組で、「今日は棚から一掴み」といってオールディーズをかける時がある。これがなかなか多様な音楽が入り混じるので楽しみにしているのだが、それにならって自分の本棚に眠っている本を「棚から一掴み」で取り出し、パラパラと見直す(読み直すではない)ことがある。
若い頃から買い集めていた本はほぼほぼ断捨離したので、本棚に残っている本はまだ読んでいない本が半分、どうしてもこの本は捨てられないという本が半分になる。
その捨てられない本の中に、グルメガイドみたいな本が何冊か残っている。発行年は2015年前後だから、すでに閉店した店も多いはずで、情報価値は著しく低い。似たような本の最新版がないかと、試しにAmazonで検索してみたが、蕎麦屋のガイドブック(のようなもの)は最近ほとんど発行されていない。ムックでも見当たらない。かろうじて存在しているのはWEB専用のデジタル出版だった。
扱い品が蕎麦のせいなのかと疑ってみた。ただ、蕎麦愛好家が高齢者に偏っているのだとするとデジタル本というのはちょっと理屈に合わないので、若い蕎麦好きの人口が減っているという意味だろう。書店で買ってくれるほどの蕎麦好きが減っただけなのだろうか。ただ、これがデザートであったり、パスタや軽量イタリアン、エスニック系料理であれば、まだ紙媒体でもガイドブック的なものが発行されていそうだとは思うのだ。ラーメンであれば、ガイドブック、人気店ランキング本も簡単に見つかるから、やはり蕎麦のせいなのだろう。

おまけにコロナによって立ち食い蕎麦屋は相当な数の店が消滅したようだ。日本的ファストフードの王者も、時代の流れというよりパンデミックによる環境変化に太刀打ちできなかったということだ。我が身を振り返ってみても、早朝に電車移動で改札を出たら強い出汁の匂いがしてきて空腹感に襲われる、みたいな状況はここ数年ほとんどない。この数年、わざわざ食べに行った時を除けば、ファストフード的に立ち食いそばを食べたことはほとんどない。
都内のあちこちにある立ち食い蕎麦屋を記憶していた、脳内立ち食い蕎麦マップももはやほとんど役に立たないだろう。それでも、わずかに生き残った立ち食い蕎麦屋、駅そばをぶらりと訪れてみたいとも思う。とりあえず来週には新宿駅東口の馴染みの店(先月まだ生存しているのを確認した)に行って、山菜天ぷら蕎麦でも食べてくることにしようか。
滅びたものへのノスタルジーと笑われても仕方がないが、想像上の蕎麦店巡りをするには、この2冊が十分お役に立つ本だった。