もう一つの埼玉名物としてあげたいのが、地ウイスキーの先駆けとなった秩父山奥で醸造・蒸留されているモルト・ウイスキーだ。これも供給量と需要のバランスが取れていないので、地元に行っても売り切れていることが多い。埼玉県内の酒店では置いてあるところもあるが、スーパーなどでは売っていない。「わざわざ」秩父に買いに行っても手に入るかどうかは、確率的に5分5分といったところだ。ネットで買おうとすると転売が横行しているし、ネット酒店の価格は定価ではない。自宅近くの酒店には時々在庫があるので、事前に電話で在庫を確認してから買いに行く。
地ウイスキーといえば思い出すのだが、サントリーの山梨にある白州蒸溜所まで、「白州」を買い込みに行っていたが、最近はシングルモルト人気のせいでなかなか手に入らないらしい。個人的には、「白州」とニッカ「余市」が好みの銘柄だが、秩父のウイスキーはそれより頭一つ上の上位ランクになる。(竹鶴はブレンドが変わった後はあまり好みではなくなった、残念)

秩父名産としての酒として付け加えると、やはり秩父錦だろうか。世間的には純米大吟醸のような高級酒を推す方が多いようだが、個人的には本醸造を好んで飲む。吟醸酒の吟醸香は冷酒で飲むには素晴らしいものが多い。特に、脂の乗った食べ物と合わせるとより美味さが引き立つ。ただ、普通に食事とあわせて楽しむのであれば、辛めの本醸造酒で十分だと思う。
今では戦中、戦後の粗製濫造された三増酒のような、乱暴極まりない日本酒はすっかり姿を消しているので、本醸造でも何種類か試して自分の好みに合うものを選べは良い時代だ。ただ、テレビCMを流すような大手酒造メーカーの製品は、慎重に検討した方が良い。日本酒メジャー企業の酒は、主たる購買層が高齢者層であり、彼らが若い時に親しんだ味、いわゆるベタ甘系の酒が多いからだ。
地酒については、吟醸酒と比べて本醸造の方がクセがあるし、独特の風味がある。吟醸酒になると微妙な差異があるが、だいたいどこの酒蔵の酒も、淡麗で芳香かぐわしいサラサラした酒に仕上がっている。だから吟醸酒の味わいはどこか似ている。大吟醸、それも高級品になればなるほど見分けるのも難しい、とても美味い酒に仕上がってくる。そんなこともあり、最近は我流な日本酒の楽しみ方として、本醸造酒を燗酒にすることが多い。
という個人的観点でおすすめするのがこちら、秩父錦の純米酒になる。これも、普通の酒屋では見かけたことがない。秩父では当たり前に手に入るようだ。


武蔵国に併合されるまでは、秩父国として独立していた秩父地方だが、今ではすっかり埼玉県の一部で「山の民」の国という感じはない。それでも、現地に行けば山々に囲まれた盆地であることが実感できる。プチ旅で行くと、そこはかとした異郷っぽさをほどよく感じられる。都内からの日帰り観光にはかなりおすすめな場所なのだが………お得な「観光切符」は三月十日までであります。