旅をする

羽田空港で泊まった話

深夜2時ごろのロビー風景 普通には体験できない空間だ

去年の夏、飛行機の運行トラブルで羽田空港到着が夜の11時過ぎになり、終電も終わった時間に空港で放り出されたことがある。タクシーも長蛇の列で、いつ乗れるのかわからない状態だった。仕方なく、始発の電車までロビーで待つことにした。ロビーの中には帰宅難民がゴロゴロいたが、ロビー内施設は全部閉鎖。都内都心部までの臨時便(バスや鉄道)を何本か設定して貰えば、都内のどこかでホテルを見つけるなり、タクシーで自宅に帰るなりできたと思うのだが。
何年か前に、降雪で空港が閉鎖になり、大陸から来た観光客が千歳空港で足止めを食らったというニュースを見て、ちょっと不思議に思っていた。なぜホテルに行かないのかと思ったのだが、要は足がないと空港から移動できないのだと、自分が同じ目にあって初めて気がついた。
今年になり大雪で新幹線が止まり、やはり駅で夜明かしになった人たちのニュースを見ると、だいたい状況は似たようなものだ。どうも、日本社会において交通機関は絶対に定時で動く、止まることはないと信じている節がある。もし止まった時にどうするか、ということを想定することが苦手らしい。いや、考えたくないから目を瞑る、思考停止するようだ。
それが交通産業に関わる経営者の信念らしいのだが、空港間の移動は、新幹線駅間の移動は自分たちの責任範疇としても、その先の接続交通機関は自己責任でどうぞということだ。理屈としては正しい。日本以外の国でも、それが当たり前だと思う。
ただ、運行に遅れが出て駅や空港で足止めを喰らうという事態が、年に何度も起きているのもここ数年の事実だ。コロナボケというより平成から続く旅客需要低迷を契機としてコストカットを志向するあまり、リスク管理もできなくなっているような気がする。

結局、空港ロビーに滞在していたのは6時間程度だった。女性や子供もいたから、何か事故が起きたらいったい誰が対応するのかと不思議だった。照明も暗くなる。節電なのかもしれないが、それは平常時の対応だろう。ロビーに足止めして夜明かしする客がいる時には、犯罪防止の観点から考えるべきことがあるはずだが。おそらく、夜の公園的な、自己責任で対応する無法空間なのだろう。
トイレは使える。ただ、「ここはトイレです」というアナウンスがずっと流れている。視覚障害者のための補助アナウンスなのだが、それが夜の間もずっと流れている。あれはなかなかシュールな状況だった。
トイレの設備だけが24時間対応で、空港足止め発生時のリク管理ができているということだ。飲み物、食べ物は自販機が稼働しているから、最低限のものは手に入る。それが救いと思うべきか。
ハイジャック防止の身体検査が典型的な空港のリスク管理だと思うが、運行遅れによるロビーでの夜明かし対策を考えないのはリスク管理として片手落ちではないか。おそらく何か事故が起こると、全員をロビーから追い出してロックアウトすることが予測できる。まあ、その程度のレベルだろう。
後になって思ったことだが、羽田空港から徒歩で都内まで移動することはできるのだろうか。首都高以外の一般道も繋がっているはずだと思うのだが。であれば、夜中の遠足で蒲田あたりまで歩いていけばよかったのかもしれない。こういうアイデアはいつも後知恵で、まさに困っているその時には出てこない。自分も危機対応能力が低すぎることを反省すべきだな。

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