街を歩く

立食い蕎麦のバージョンアップ?

東京でサラリーマンをやっていると、この店のお世話になることは多いと思う。都内には有名な立ち食い蕎麦屋のチェーンは複数あるが、東京山手線東部では小諸蕎麦、西部であればこの富士そばにお世話になっていた。
東京で働くようになって駅前の立ち食い蕎麦と牛丼屋の多さにびっくりしたが、店の数が多いことはそれだけ需要が多いことを意味する。立ち食い蕎麦には寝坊をした時の朝飯や、残業食で随分とお世話になった。
ただ、コロナの最中から主力客であるサラリーマンがリモート勤務になったりしたため営業的にはなかなか大変だったようだ。このコロナの3年間で立ち喰い蕎麦屋の廃業はかなりあったようだし、チェーン店でもメニューの改変が進んでいる。表の看板で見るように、そばの店から天ぷらや丼推しに変わってきている。最大の変化はラーメンがジワリと勢力拡大していることだ。

普通の醤油ラーメンもあるのだが、個人的なお気に入りは煮干しラーメンだ。ぱっと見では豚骨系の白いスープに見えるが、味はしっかりと煮干しの出汁になっている。青森の煮干し中華そばに近い感じがするが、あれほど魚臭くはない。都会のマイルド系という感じだろうか。具材はシンプルというか、おかめそばのトッピングを思い出す和風テイストな感じもある。チャーシューが昔懐かしなペラペラなので、それもまた「味」というものだろう。個人的には厚切りチャーシューよりも薄切りの方が好みなので不満はない。いちばん頑張っているのはワカメで、蕎麦よりもラーメンスープの方が、よく似合っている気がする。この煮干しラーメンは一部限定店舗のメニューだったはずだが、全天に広がったのだろうか。富士そばは個店でのメニュー拡散がすごいので、全店共通メニューはそれこそ限定的だ。煮干しラーメンはいまだに都心部だけなのかもしれない。
蕎麦屋のラーメンが人気の高い山形県で、蕎麦屋のラーメンを食べると、蕎麦と中華そばの文化的ミックス具合がよくわかる。一時期、和風ラーメンなる怪しげなものが流行っていたことがあるが、蕎麦屋のラーメンはそれとは違う気がする。蕎麦屋のラーメンは「出汁を使った麺文化」という点で相性が良いと思う。麺の違いがバリエーションになる。だから蕎麦屋のラーメンは成立する。しかし、うどんとラーメンは同じ小麦麺製品なので同居が難しい。うどん専門店でラーメンがメニューに載っているのはみたことがない。逆にラーメン屋で蕎麦が同居している例は少ないというか、有名な店はほとんど記憶にない。(北海道の山頭火で蕎麦の麺があるくらいか)
蕎麦屋のメニュー拡張機能はすでに麺や丼の取り込みで保証されている。麺である蕎麦を飯に置き換えることで、メニュー拡張はほぼ自動的に可能だ。だから、立ち食い蕎麦チェーンが「蕎麦とラーメンと白米飯」を提供する次世代の大衆食堂に進化する可能性は大きい。おまけに立食い蕎麦は最初から、カウンターでの商品受け渡しという省人的コンセプト設計だ。
立食い蕎麦屋の好敵手である牛丼屋のメニューがやたら複雑化していて、おまけに値頃感を失うほどの値上げが続いている。現在の牛丼屋が取る基本戦略は、新商品投入=価格上昇の構図で、いずれ限界が来るだろうとは思う。だから、それを横目で見ながら立ち食い蕎麦チェーンはあれこれ画策しているようだ。そのうち、「牛丼が本業の店」よりもうまい牛丼が立食い蕎麦屋で出現しそうな気もする。「牛丼食べるのなら○○蕎麦がいいよ」みたいな評判が生まれそうだ。牛丼屋VS立ち食い蕎麦屋の決戦は、蕎麦屋の方が優勢な気がする。
演歌のかかる店内で、最後まで残しておいたメンマを噛み締めながらそんなことを思っていました。

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