街を歩く

復活 The 立ち飲み

渋谷にある立ち飲みの店によく通っていた。なんとなくしばらく行っていないうちにひっそりと閉店していた。街の再開発の影響だったようだ。まだ禁煙規制が緩かった時代、地下にある店の入り口を潜るとタバコで店内が煙っていた。(という印象がある)古き良き昭和の世界で、天井近くに置いてあるテレビでは野球中継が流れていた。家に帰ると野球中継が終わっているから、なじみの居酒屋でテレビを見て帰るなどということが当たり前だった時代だ。
立ち飲みの店で長居はしないという暗黙のルールは、この店では全く成立していなかったような気がする。自分のためにひとり時間を過ごすのが立ち飲みの店のはずだが、スポーツ・バー的な共感の場という役割を果たしていたのかもしれない。

その店が、去年の年末近くに再建されたと聞き、恐る恐る出かけてみた。前の店はビルの地下だったが(だから初見で入る人はいなかったはずだ)、新店舗は通りからちょっと引っ込んだではいるが一階にあり入りやすい。夏になれば扉を開けて表で酒を飲む人も多いだろう。ただ、今の東京ではエアコンなしの屋外で立ち飲みすると命の危険がありそうだ。
看板もオシャレというかひっそりとしていて、渋めのスタンド割烹みたいな感じがする。これだけみると昭和の香りはかけらもない。

店内は、さすがに新店だけあって綺麗なものだ。タバコの煙もないから、店内が煤けて風格が出ていくのにも時間がかかるだろう。あちこちの店で消えていたテーブル上のあれこれ(箸立てや調味料など)もすっかり置かれるようになった。
壁にブラさがっているメニューが描かれた黒板は昔と同じスタイルだ。

カウンターの前には、白い紙に印刷されたメニューが丸めてコップの中に入っていた。おもむろに取り出してあれこれ注文の品定めをする。The 居酒屋定番というメニューが並ぶ中、オヤっと思う新しめな名前もある。クリームチーズやらアーリオオーリオやらキャラメリーゼやら、カタカナが混ざるメニューになっているのは令和の証だろうか。お値段も昭和価格から令和価格(最新版)になっているのは仕方がない。
赤丸付きがおすすめのはずだが、よくよくみるとこれこそ居酒屋メニューと言いたい定番品だった。

今回は一つだけ注文してみた。昔食べていた記憶があるメンチだが、何やらとてつもなくすごい料理に進化していた。酒の肴というより、ビストロで出てきそうな風情がある。定番のメンチでこの変わりぶりなのだから、やはり端から順番に食べてみたいものだ。全部試し終わるまでには週一で通ってもずいぶん時間がかかってしまう。燗酒は熱めだった。昔ながらの燗付け機が使われているのだろうか。

一番変わったのが最新型と言えるスマホQRオーダーシステムの導入で、なるほどこのあたりは居酒屋DXだなと思っていたが、お店の方に最初から口頭オーダーでOKと言われたので、それじゃあと普通に注文してしまった。
これからの立ち飲みする客層を考えると、スマホオーダーが主流になるのは間違いない。が、いまだに生存しているヘビーユーザーの大半はオヤジ族+高齢者のはずだから、スマホオーダー制一択にはなりきれないのだろうなあ、などと燗酒を飲みながら考えていた。
飲み物も燗酒などという衰退した酒はそのうちに消えてしまい、ハイボールとサワー中心になるのも間違いなさそうだ。それでも、ホッピーと焼酎という東京居酒屋の王道はしっかり残っていたから、新世代のハイブリッド立ち飲み屋としてなんとか生き残ってほしい。
次に行けるのはいつになるか、それとも全ての予定を渋谷経由に変えるか。あれこれ悩ましい。

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