
自宅近くの駅前は昭和の中期に開発された公団アパートが広がっている。そのアパート群も老朽化により平成には建て替えが進み、いまではURの賃貸マンションとして生まれ変わっている。旧公団アパートとしては珍しく駅前にひろがる交通至便な場所で、お家賃もそれなりに高いのだがいつも空き部屋待ちになっている人気物件らしい。
敷地内に公園もあり付近の道幅も広い。小学校も徒歩5分圏内なので、お子様がいるファミリーには人気があるようだ。それでも、小学生の数は減っている。日本の少子高齢化に抵抗している街なのだが、通りを歩く人の半数は高齢者なので、やはり今ではジジババ・タウンなのだ。

ただ、ジジババ・タウンであっても良いところがある。さすがに喫茶店の数は少なくなったが、町の洋食屋が生き残っている。それも平成の洋食屋ではなく昭和スタイルの洋食屋だ。だから、オムライスはふわふわたまごにデミグラスソースではなく、薄い卵焼きにたっぷりケチャップのスタイルだ。これが芸術的に素晴らしい。新宿の洋食屋とどちらか美味いと言われると、判断が難しいハイレベルだ。銀座の老舗洋食屋と比べるとこちらが好みだ。麻布にある有名な洋食屋のフワトロオムライスと比べたとしても、圧倒的にこちらが好みだ。
まさに一点の曇りなき究極のオムライス(ただし昭和版)だろう。新宿の洋食屋、岩手県花巻市にある大食堂のオムライスと並ぶ、日本三大オムライス(個人認定)であり、えへんえへん、と言いたい。
ちなみに中身は、チキンが入ったケチャップライスだ。自分好みのチキンが多めなもので、味つけも強めになっている。オムライスもチャーハンと同じで、自宅で作った物はプロの作品に及ばない料理の典型だ。やはりチキンライスが炒め物料理として難度が高いせいだろう。ケチャップで味付けしながらご飯を程よくぱらりとさせるのは本当に難しい。家庭で作るとどうしてもご飯がべちゃりとくっつき気味になる。
やはりオムライスはプロの腕を信じて、洋食屋で食べるべき食べ物なのだ。

地元の街には、20世紀の終わり頃に中国残留孤児の帰還支援センターが置かれていたためか、本格的な中華料理屋も多い。最近はやりのガチ中華というものの走りだろう。ただ、そのガチ中華も今では日本生まれの2世が跡を継いだ店も増えているようで、だいぶマイルドになってきた感じもする。
ジジババの街でも老舗洋食屋とガチ中華が楽しめるのだから、人生捨てたものではないなと感じる最近であります。