
札幌の焼き鳥は、鳥と豚ともつが混在する。正確にいうなら串焼き屋というべきだろう。そして、焼き鳥屋の一番人気は、実は鳥ではなく豚であることが多い。だから、札幌では東京からやってきた全国チェーン焼き鳥屋が定着しにくい、というかほとんど存在しない。
だから札幌の高級焼き鳥屋として繁盛している店でも、鳥だけにこだわっているわけではない。やはり豚人気も強く、おまけに高級店では海鮮串が人気だったりする。その札幌焼き鳥事情に文句があるわけではなく、ファーストオーダーはいつも生姜の豚肉巻きにしている「豚肉」ファンだ。その後は、つくね数種、ささみを頼むくらいで注文メニューの鳥率は限りなく低い。

そして最初の飲み物の注文は水になる。誤解を避けるために弁明すると、水だけを頼むわけではない。酒も頼む。が、酒と一緒に水を頼むと、水だけ忘れられることが多いので(おそらく注文表に水は出力されないせいだろう)、その予防策として最初に水を頼むと便利だと気がついた。水が出てきたらすかさず酒を注文する。生活の知恵というか居酒屋ライフハックというか。ただ、面倒な客だと思われるかもしれない………

コロナの間は、感染防止のためと称して卓上から調味料などが消えていた。必要な方は従業員にお声がけください、という表示も控えめで、唐辛子なしの焼き鳥を食べてしまったこともある。米国CDCの発表を信じるのであれば、コロナの主因は空気感染(エアロゾル感染)、飛沫感染で、接触感染はほとんどないようだ。だから、手指のアルコール消毒の意義というか意味についてはもう少し科学的な検証をしてほしいとずっと思っていた。(あくまでコロナ対策として)
相変わらず入口での儀式的消毒は続いているが、卓上に戻ってきた唐辛子と醤油を見ると社会常識として「接触感染」を訴える政府厚労省、及び政府関係下の医療従事者の発言は、誰も信じていないのだなという気がする。
ただ、コロナ対策としてではなく、他の感染症対策として日本全体で安全安心運動が実施されたと考えれば、これは意味あることだ。飲食店の衛生意識も、これまで以上に鋭敏化し向上したのは間違いない。コロナが増えたらノロウイルス食中毒が減った。これは逆相関と言えそうだ。
コロナ対策としてではなく衛生環境改善と考えれば、入り口の消毒が続くことには同意できる。面倒臭いと言われればそれまでだが、少なくとも食事をするたびに消毒する羽目になるのは、偉大な啓蒙活動だ。手洗いの頻度も増えるだろう。日本人の健康な生活、というテーマで考えれば継続するのが大正解だ。
まあ、そんな志のある政治屋はこの国に存在しないので、安全安心大運動は実現はしないだろう。現代の政治屋の特徴は、増税に対して実に簡単に決断するということだけだ。自分対tの経費削減には与野党連合で反対するくせに。大増税は、歴史が証明する「革命」の前兆なのだがなあ。

最後にささみの梅ダレを頼んだ。これは、うまい。砂肝の塩焼きも旨いが、やはりお店独自の調味料開発をした「かわり焼き鳥」はその店の看板商品だから、あれこれ注文したくなる。ただ、この庶民の味方と言いたい焼き鳥屋もコロナの影響に耐えきれなくなったのか値上げをした。それでもまだまだリーズナブルなお値段なのだが、何かちょっとほろ苦いものもある。でもまあ、店が閉まっているより値上げしても良いから開けてくれた方が何倍マシなことか。焼き鳥を食べる楽しみは、不滅であってほしい。
ようやく焼き鳥屋が繁盛する社会に戻ったのは実に嬉しい。