
金沢駅の駅ビルには、たくさんのレストランや居酒屋が入っている。大体が観光客目当ての店に見える。地元客の日常使いという感じはあまりしない。駅ビル飲食店の中で、ここは地元民が使っている店だと思ったのはラーメン屋くらいだ。そこは、正しい意味の行列ができている。
ただ、観光客目当ての店がダメだといっているのではない。おそらく、ランチのセットなどは地元民向けに作られている。特に、一番安いものは、間違いなく地元民向けだ。観光客の大多数は値段をケチって、地元ネタを食べないというのは考えにくい。売る方も、観光客向けには高いネタをどう仕立てるかが腕の見せ所だろう。
そんなことを考えながら、金沢駅ビルで「回らない回転寿司」の二軒目に挑戦した。

注文したのは、ランチセットの中で二番目に安いものだ。いわゆる1.5人前という代物で、数が多い。ネタは北陸限定、地元ネタという感じではなく、ごくごく一般的というか「普通」のネタ構成だ。唯一金沢っぽいのが、カニ足が乗っていたことくらいだ。ランチセットだから、いわゆるシャリ玉も大きめに設定している。10貫も食べるとお腹いっぱいになる大盛りセットだ。
今や滅亡寸前の百円均一回転寿司と比べると(というか比べてはいけないのだろうが)、明らかに鮨として完成度が高い。100均寿司はシャリ玉も小さくなり、ネタも小さくなり、今や手毬寿司程度に小型化されている。小ぶりの寿司は食の細い人にはありがたいかもしれないが、絶対的な課題を抱えている。シャリ玉とネタのバランスが悪いのだ。
コスト削減を目的とした小型化、矮小化が限界にきているから、カニや本鮪などを使った限定ネタでの高価格化を狙う。その上で定番品の値上げに踏み切るしかなかったのが、この一年の回転寿司業界の流れではなかったか。「安い」を捨てて、結果的にたどり着いたのが「高くても旨くない」という評価だったのは、迷走の極みということだろう。おまけに最後は公取の指導まで入った。
そんな業界大手のスランプを尻目に、北陸の回らない回転寿司はコスパの良さをますます磨き上げている。そんな感じがする。低価格チェーンも囮広告で捕まるようでは、外食として滅亡の道を歩んでいるとしか思えないが、オーナーであるファンドは売り逃げて仕舞えばいいだけだから、この問題の根は深い。
うまい寿司を食べながら考えることではないのだが………

鮨のついでに好物のタコ酢を注文してみた。よく考えれば、日本海沿岸でタコが有名なところはあっただろうか。北海道の水ダコくらいではないか。金沢というか能登半島界隈でタコは取れるのか。食べているうちに疑問が色々と湧き上がってきたが、普通にうまいタコだった。ひょっとするとアフリカ東海岸産のタコかもしれないが、うまいのでよろしい。
100均寿司のタコがあまりうまくないのは一体なぜだろう、という新たな疑問も浮かび上がった金沢の回らない回転寿司体験でありました。