
久しぶりに恵比寿に出かけた。所用を済ませた帰りに、最近お気に入りのラーメン屋に寄った。コロナの始まりごろに開店した店だが、当時の混雑ぶりは一段落しているようで、昼でも並ばずに入れた。こんなことで日常が戻ってきたなどと感じてしまうくらい、コロナの2年半は面倒臭い時期だったのだな、などと思ってしまった。
電車も昔のように混雑しているし、足早にすれ違う人の多さは大都会が(悪い意味で)元に戻りつつある証拠だろう。コロナの間は他人に近づくのを避けている人が多かったせいか、道を歩いていても誰かにぶつかる(ぶつけられる)ことはなかった。第7波だとマスメディアが騒いでいた頃から、道を歩いているとぶつけられることが多くなった。スマホを見ながら歩く人間が増えたせいだ。
人は本当に何も学ばないものだとしみじみ思う。コロナの時代は、少なくとも、大都会は歩きやすい場所になっていた。今は、元通りで都会のダメな部分が復活している。

店頭にかかっていたお品書き板も微妙に変わっているような気がする。原価上昇で値上げしたのだねとすぐわかる値段の付け替えが痛々しい。つけ麺は麺の量が多いから、小麦が値上がりすると影響は大きいだろう。

らあ麺はいつものように普通に美味しい。スープの味がちょっと変わった気もするが、そもそも開店から2年も経ってスープが進化しないようでは店が潰れてしまう。人気店は麺、スープ、トッピング全てがゆっくりと進化していくものだからだ。老舗と言われるラーメン店ではその努力が続けられているから、老舗になっている。
この店の味は昔と変わらない、などというのは味音痴な客のノスタルジーでしかない。油や小麦の原材料は10年単位でゆっくりと変化、進化している。10年前であれば国産小麦でラーメンを作ることができるグルテン値の高い高い品種はほとんど存在していなかった。今では新品種が普及し、国産小麦で製麺したラーメンが当たり前になっている。
醤油や味噌の原材料である大豆も品種改良が続いているので、同じ工程で同じ味噌や醤油ができるはずがない。原材料のゆっくりとした変化に合わせて、当然ながらスープの作りや製麺するときの粉の配合など、日々変化に対応する必要がある。
進化を忘れない店だけが生き残っていけるのだと、改めて思いながら、進化したらしいスープを啜っていた。恵比寿で働いていて週一みたいなハイペースで来ていたら、きっとわからない変化なのだろうなとも思った。たまに来るから良いこともあるということか。次回は魚介系メニューにしなければなあ。