小売外食業の理論

ワークマンとユニクロ SPAの考察 #3 ユニクロが産んだ後継者

失われた30年というのが平成日本の評価だが、その30年に日本はSPAという技術を磨き込み、世界ブランドが日本侵略を諦めるほどの「内的攻勢」をしていた、とも理解できる。
海外有力アパレルブランドが日本市場で苦戦した、あるいは撤退した大きな要因として、カジュアル衣料市場のでユニクロが果たした役割が大きい。グローバル企業が描いた基本戦略、つまり世界規模の調達力を使って価格メリットを出すというものが、ユニクロによって妨害されたというのが本筋かもしれない。
アウトドアメーカーの巨人たちが投入していた1着1万円のフリースジャケットを、1500円というとんでもない価格で粉砕したのがその最初だ。その後も、1着3万円はするはずのダウンジャケットを5000円程度で発売し、高級ダウンジャケットというマーケットを破壊し尽くした。

カジュアルなアウトドア、と言う目新しさだが、作業靴の進化系とも見做せる

ただ、そのユニクロも30年近くたち、価格戦闘力の低下は否めない。一度、ブランドとして力をつけると、そのブランドにより値上げが可能になる。本来、ユニクロは低価格高品質を求めることを習性として築き上げたブランドであったはずだ。それが苦しくなると値上げをするのが、第二の習性になれば、コアな客層から離反が始まる。
最近のユニクロってさ・・・とヘビーユーザーが言うようになる。第二創業期などと言われるブランドの成長痛が生まれる時期だ。
企業が成長に伴うブレを修正し、創業拡大時の理念に戻れば、強い老舗になる可能性はある。あるいは値上げを含め、より新しいブランドを作り上げれば、ブランド転換が成功する。しかし、大方の企業はその二方向とも正解に辿り着けない。
大方の終着点は「高くて低品質でコスパが悪い、昔のブランド」と言う評判だ。特にアパレルメーカーは、この手のブランドの低落、陳腐化の先例には困らない。流通業でも、退場していった大企業は、ほとんどこの「値上げの罠」に陥って倒産・破綻していった。おまけに一度落ちたブランドは、いろいろなファンドも含めた再建屋が乗り出しても再生できた例は少ない。

本格的な山歩きに使えるかは問題ではないだろう。ヘビーギアのタウンユースとして考えるべきだ。

ユニクロが一山当てたのは「フリース」で、その次の山は「ヒートテック」「エアリズム」というインナーの新素材による高機能化だった。その後は、ブランドに寄りかかったファッション化と値上げが基本戦略になる。画期的な新素材や新技術と言う「ヒット」は、一部の女性用アンダーウエアを除くと、ほぼ見当たらない。
すでに新素材のノウハウは流出しまくっている。低価格帯ブランドでは「しまむら」が、大手流通業ではイオン・IYが同様な手法でストアブランドを展開している。正しく言えば流通業界において、ファッション衣料全般がユニクロのデッドコピー化したと見るべきだろう。
それに対するユニクロの反攻はといえば、有名タレントを使ったCMの増量くらいだろうか。そして成長の基盤を海外展開の求めた。ただし、これはすでに没落したアメリカアパレルブランドが行った戦略とほぼ似通ったもので(完全コピーというべきか)、その成功モデルは少ない。というより、アメリカの先例に学ぶと必ず失敗する戦略、と言うことがわかっている。ユニクロは反面教師に学ぶことができるかどうかなのだが・・・。

ソール(底面)の厚さは、重要な技術だろう。厚くて(クッション性が強くて)歩きやすいかどうかがポイントになる

その隙間をついたかのように、ワークマン製のアウトドア衣料、アウトドアグッズが連続でヒットしている。コロナ化でのキャンプ・アウトドアブームという追い風はある。ただし、ヒットの基本はそこではない。
ワークマンは作業服という実用性一点張りだった商品群にファッション的な要素を持ち込んだことで、「プロ」ユースの差別化を図ってきた。かといって、デザインだけで売っているわけではない。あくまで機能重視で、作業着という専門性の高い製品群の差別化要因が付け加えたファッション性だった。また、大量生産を軸に低価格化を推し進めてきたブランドでもある。
その「高機能」「低価格」なプロ仕様製品を、対象顧客の方向を変えたのがアウトドア商品群だと言えるだろう。アウトドア市場は、極めて限定された「プロ仕様」が牽引している。つまり危険な高山登山用品であるとか、ジャングルでの生存製を高めるサバイバルグッズのような狭いマーケットだ。
お気楽な野外遊びのためには、そこまでの生存性は求められていない。所詮、1泊2日程度の平地での遊び道具だ。そこにプロ仕様で高額の製品を購入しなければならないとすると、顧客基盤の拡大には不向きだろう。
逆に、そこまで高機能ではない「中機能」「低価格」製品を準プロ仕様で開発し、市場投入することで差別化することができる。その時の準プロ仕様が、ガテン系作業服の延長にあったということだろう。ファッション化を目指したユニクロには到達できない世界だった。
そして、この世界(アウトドア製品)は、機能性の改善、新素材の投入で爆発的な成長を達成することができる。例えば、防水靴(長靴)の延長でマリンシューズが生まれたり、その進化改変として川遊び用の靴が生まれる。
LLビーンのヒット作、ハンティング用防水靴は画期的なアウトドア製品だったが(今でも人気はある)、素材としてのゴムが進化すると革+ゴムではなく、オールゴムの靴が出来上がる。ワークマンのサファリシューズ(もどき)は、オールゴム製品として進化した典型だろう。
最近では、虫が寄って来なくなる(忌避性素材を使った)Tシャツや、焚き火で飛んでくる火の粉に強い(対燃性)など、アウトドアでしか必要とならない機能での新製品が投入されている。この手の製品については、素材の改良で毎年新製品を投入できる。市場が拡大することで量産効果を発揮し、価格の定着ができれば、ヘビーユーザーが毎年のように買い換えるドル箱商品になる。
この手法はまさしくユニクロの成長戦略だったはずだ。それが、全く畑違いの(ファッションアパレルではないブランド)ワークマンに受け継がれ、より永続性の高い売り方に変化した。さらにワークマンは、「ワークマン・プラス」「ワークマン女子」などサブブランドによるブランド展開も上手にしている。まさに、サブブランド「G.U.」の拡大に苦労したユニクロに学んでいるかのようだ。ユニクロの後継者が産まれかかっているかのように見える。

ちなみに今後のワークマンの進化を予想するとこんな形になりそうだ。
作業着ブランド
→軽アウトドアグッズ・衣料拡大(現在)
→タウンユースアウトドアでファッション化開始
→アウトドア風ファッション(5年後)で、機能性・プロ仕様を薄めつつカジュアル・ファッションブランドに転生

その時には、ユニクロが諦めたロードサイド店舗を中心に店舗拡大ができるか。衰退した都市部を諦め、全国の地方都市郊外で生存可能な形態に進化できるか。そこがユニクロを超える境界線のような気がする。

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