街を歩く, 食べ物レポート

帯広の食堂がうらやましい

これぞ、街の誇り と言いたくなる

帯広駅から徒歩3分ほどの場所に、由緒正しい食堂がある。まさにThe 食堂と言いたくなるルックスだ。ファミレスの台頭ですっかり少なくなってしまった、街中にある大食堂だ。昔はデパートの最上階といえば、大食堂で決まりだったが、今では消滅したコンセプトでしかない。それが、街中の路面店として残っているのだから、奇跡に近い。
街中にある食堂の特徴といえば、店名の入った暖簾だろう。これがなくなると、その店の価値は半減すると言いたいくらいの重要パーツだ。

街の食堂のシンボルはこれだ

二つ目の重要パーツは店頭にあるワックス・サンプルで、これが退色して干からびている食堂は二線級という判定をすることにしている。二線級がダメな食堂かというと断定はできないが、店主のやる気が失せていて(店の表に関心がなくなっている)、看板メニューはなくなっていることが多い。まずくて困るというほどではないが、「推し」たくなるほどのうまさはない、という感じが二線級の特徴だろうか。
ワックス・サンプルを作るのはそれなりの費用がかかるから、店に対する投資を怠っていないという証明でもあると思う。何より、美味しそうなワックス・サンプルを見ながら、今日は何を食べようかとあれこれ迷うのが、食堂での最初の楽しみだろう。ファミレスのメニューブックとは楽しみの「威力」が違う。

店内はファミレス風

店内がファミリーレストランっぽくなるのは仕方がない。ファミレスのテーブルや椅子は、ある意味で人間工学的に研究されているので居心地がよい。現代人が慣れている暮らしの延長線にある。食堂だからといって、客の要望に合わせて変化しないはずがない。客席が物理的に変化するのは当たり前だ。昔ながらの小上がりや座敷を居心地が良いと思う世代は、もはやすっかり減少しているので、畳に座布団という席が無くなってしまうのは仕方がない。
ちなみにテーブルの上にあれこれ邪魔なものを置いていないのも、良い食堂の条件だ。全国展開するチェーン店、特に居酒屋やファミレスでは、テーブル上の見苦しさ、邪魔くささが限界を超えている。そこに気がついていないのは、チェーン本部の担当者と経営者だけで、企業として愚鈍さの表れと言いたい。自分がそうした店で最初にやることは、資格の邪魔になる販促物その他、全部まとめて使わない座席によけてしまうことだ。テーブルの上には調味料以外何もない状態にする。これで居心地がすっかり良くなる。販促物の中身は、99%見ることはない。たまに、内容を覗き見するが、時間の無駄使いをしてしまったと後悔する羽目になる。
センスの良い食堂では、壁にベタベタとポスターを貼ったりPOPをつけたりしない。見た目を簡素にする方が、居心地の良さにつながるとわかっているのだろう。

やはり大衆食堂で最初に注文するのは熱燗に限る、と勝手に思い込んでいる。強いて挙げれば第二選択としてビールもある。が、それも「生」ではなく熱処理済みラガーの小瓶が良い。黒ビールがあればもっと良い。だから、まずは熱燗を頼んだ。
酒が届くまで何を注文するかを考えているのが食堂での最大の楽しみだ。街の食堂では、つまみを頼んで、酒もおかわりして・・・というように本格的に飲み始めて長居をしてはいけないと思っている。酒はお銚子一本まで。あとは、サクッと何か食べて帰るのが、自分なりのお作法というものだ。注文を決めたら、お手隙の従業員を探し、手を上げて合図する。決して「すいませーん」などと大声で呼んでは行けない。注文が終われば、ちびりと酒を飲みながら店内のあちこちを見ているのも楽しい。周りの客の会話が聞こえてきたりする。お手軽な街の噂話であることが多い。あとは上司の悪口、自分の家族や友人のあれこれ。いかにも街の食堂の話題らしいが、生々しいこともある。
たまたま箸袋を見ていて気がついた。電話番号はあるが住所は書かれていない。帯広駅前としか書いていない。確かに、帯広地元民にとってはそれで十分だろう。思わずニヤリとしてしまった。うちのことは、みんなが知っているという、強いプライドが見え隠れしている。良いなあ、こういう気位の高さ。

何と言ってもラーメンが素敵だ

食堂で「おすすめは何?」と聞くのは無粋なものだと思う。誰もが好きなものをラインナップしているのが「街の食堂」なので、居酒屋や定食屋のように本日のおすすめを聞くというのは、どうにも自分の思考に合わない。
だから、腹具合で食べたいものを選ぶ。時間がなければカレー、時間に余裕があればラーメンかオムライス。ゆっくり食べたければカツ丼、軽く食べたい時はかしわ蕎麦かざるそば。そんな自分の中の定番から選ぶので十分だろう。
結局、いつもの通りに定番な味噌ラーメンを注文した。昭和的なシンプルラーメンが出てくると思い込んでいたら、しっかり豚骨スープの現代風味噌ラーメンだったのにはちょっと驚いた。街の食堂も日々進化しているのだと、逆に嬉しくもなった。
街に残る食堂は、まさにその街のレガシーだ。政治家の皆さん、オリンピックをやるより、自分の街の食堂を残すことから、仕事を始めると人気者になれると思います。

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