今年の夏旅で泊まった、一番豪華なお宿の話になる。海の見える宿はいつ泊まっても嬉しいものだが、やはり東に水平線が見える太平洋岸の宿が好みだ。黒潮の宿ということになる。

ご存知の通り黒潮は日本の太平洋岸を流れる大潮流で、それに乗って南から魚がやってくる。北太平洋から南下してくる千島海流と三陸、宮城県沖あたりでぶつかるので、三陸沖では魚種が豊富になる。鮭とカツオが同居する場所ということだ。
高知県の土佐湾はその黒潮が直接影響するところで、カツオの一大漁場になっている。当然、カツオは黒潮に乗ってくるので、南は沖縄から北は千葉・宮城まで季節によってカツオは釣れる。ただ、高知はカツオ大好き人間が多いから、うまい鰹が集まってくるらしい。
北海道内では美味しい鮭やホッケが食べられるが、北海道外には二級品が出ていくみたいなイメージだろう。当たり前だが、北海道に行って「高いホッケ」を食べると人生が変わるくらい味の違いがわかる。高知のカツオもそれと同じことで、高知で食べるカツオは高くてうまい。本場だから安いはずと思っていては、うまいカツオは食べられない。

その高知人が認めるカツオの街、久礼にある高級旅館が黒潮本陣という。久礼の街を見下ろす小高い山の上に建てられて、太平洋を水平線まで見渡せる。それも風呂に入ったままというから、ゴージャスな風景の楽しみ方というしかない。山の上の方にはコテージというか離れの一軒家もあるので、グループで泊まることも可能だが、やはり海の見える本館が良い。

これまた海の見えるレストランが本館内にあり、少人数のグループであれば夜景を見ながらの和食ディナーがおすすめだと思う。などと言いながら、自分は夕食をここで食べたことがない。夜となると、いつも久礼の町で友人たちと居酒屋で飲んだくれてしまうせいだ。一度はロマンチックなムードで、夜の太平洋を眼下においてディナーなどしてみたいものだ。多分、一生できないと思うけれど。

そこで、今回は朝食を食べてきた。最近のホテルではほとんどがビュッフェスタイルになり、朝から何だかもりもり食べなくてはならない気にさせられる。それはそれでビジネス旅行であれば、朝からパワーという感じで良いのだが、のんびりと旅をするときには、ちょっと豪華な朝ごはんにしてみたい。この旅館の朝ごはんは、その希望にぴったりと会っていた。
美味しいものを少しずつ食べると幸せな気分になる。たとえそれが朝食であれ、うまいものは美味い。ただ、ちょっとだけ残念なのが、少しずつ食べてもやはり量が多いのは間違い無くて、朝からとてもお腹が膨れてしまうこと。食べ残さないように頑張ったがそれでも完食は厳しい。
朝から優雅すぎて申し訳ない気分にもなったりするが、それぞ旅行の醍醐味だ。おまけに、食後でも露天風呂(海水)に入ることもできるので、久礼の町でお泊まりするのも良いものだ。高知観光の穴場かもしれない。