
この広告を見つけたのが、札幌から埼玉に帰る直前だった。このお話「銀の匙」は好きなコミックだったので、展示会を見に行きたかったなあとつくづく残念に思った。今回は長逗留していたので時間はたっぷりあったはずなのに、帰る前日に気がつくとは、運がないというか縁がないというのはこういうことだろう。このお話はアニメ化もされたが、原作の少年コミックの出来が良かった。
難しくいえば、受験に挫折した優等生が、反抗と逃避の先として十勝の農業高校に進学する。そこで拗ねまくっていたはずが、いつの間にか農業体験を通し、友人たちのとの関係再構築で解放されていく。挫折からの回帰と成長という「少年コミック」の王道だった。簡単に言えば、農業大好き少年の誕生物語でもある。
そこで、あれこれ考えた末(札幌滞在を伸ばす選択肢もありだったが)思いついた。日程変更をして帯広経由で帰ることにしてみた。展示会は見られないが、現地?に行ってこの物語の舞台で同じ空気を感じるのはどうだろう。良い思いつきではないかと納得した。思考回路がどこかで飛んだような発想だった。

帯広まではJR特急利用で2時間程度。石勝線が開通して以降、本当に道東への移動は楽になった。おまけに高速道路も開通したので、帯広は自動車移動を含めて札幌からは日帰り圏になった。東京であれば新幹線移動で仙台に行くのと同じ感じかなと思う。

朝早い特急とかちで帯広に着いたのは、まだ午前中だった。これまた鉄道旅お約束の駅名表示を写真に撮って気がついた。よく見ると記憶にないのが隣の駅名だった。北海道の駅名を全部覚えているわけではないが、聞き覚えがないのはなぜだろう。

高架ホームを降りた駅の一階には、観光案内所があり、幸福駅をモチーフにした可愛らしいものだった。ただ、幸福駅のブームは昭和中期だったはずで、今ではどんな人たちが幸福駅(跡地)を訪れるのだろうか。そもそも幸福駅の存在を知っているのか?などど、あれこれ疑問が浮かんでくる。
ひょっとすると幸福駅は今でもインスタ映えする風景として、再ブレイクしたのかもしれないな?などとあれこれ勘ぐってしまった。

北海道各地のJR基幹駅はおおよそリニューアル、再構築が完了している。札幌駅を筆頭に函館、旭川、帯広などJRの各駅は現代風の商業施設に代わった。ただ、逆にレトロ感を残している釧路駅や小樽駅の方が、個人的には好ましいのだが。
屋外温度計の目盛りがプラスは30度代というのは理解できる。北海道の最近の夏は暑いからだ。しかし、マイナスが30度代というのは、北海道でもあまりないだろうなあ。この街が夏冬で温度差が60度近くあるということで、いやはや、すごいことだ。

帯広からの帰りは、帯広空港からになる。便数が千歳便ほどの数はないので空港内もどちらかというとのんびりした雰囲気がする。大都市圏以外にある各地の空港もこんな感じがする。

北海道の馬というと道産子と呼ばれる日本原種に近い小型の馬を想像することが多い。が、実際に北海道で一番活躍したのは骨太で体格の良い農耕馬であり、競馬で見るサラブレッドのような、すらっとした走るための馬ではない。
爺様が生きていた頃は、馬を飼っていた。本物の馬を間近に見る機会があった。うっすらとした記憶でしかないが、北海道であっても馬の現物を見て育った世代の最後だろう。そんな農耕馬のレプリカ?が空港の入り口に展示されていた。
札幌で見損ねた農業高校生のお話の展示会を、一コマだけだが帯広空港で見ることができたような気がした。帯広でのシンクロ率はそこそこ高かったようだ。
でも、9月になれば「こちら」で展示会が見られるのだ。もう一度、現地に来るべきなのか? 悩ましいなあ。