
なんだか久しぶりに切符を買った。それも往復の特急券と乗車券が分離したものだ。昔はこれで鉄道利用していたなと懐かしくなった。最近はスマホ連動のスイカでどこでも行ってしまうので、紙製の切符を買うなど青春18きっぷくらいしか記憶にない。今回の旅先は高知県中西部にある海沿いの町で、高知県西部を走る土讃線をつかった。

昭和生まれのオヤジやジジイには記憶にあるかもしれない「土佐の一本釣り」というコミックの舞台になった漁師町だ。作中で主人公が遠洋漁業から帰郷するシーンで乗車していたのは蒸気機関車だった。確かに昭和50年代まで全国各地でSLは現役だった。今では新幹線に乗るよりプレミアムな特別列車になっている。

土讃線は今でも電化はされていないからディーゼル車が運行しているが、それでも特急はこのスマートな姿だ。高知から県西部の中村、宿毛に行くには鉄道旅が一番楽だ。自動車での移動は高速道路が途中まで通じているが、その先は一般道なので、それなりに時間もかかる。西日本、特に四国は一般道もかなり道幅が狭いところがあり、長距離ドライブはしんどい。

基本的に単線路線なので、特急通過まちのため駅での時間調整もある。のどかな鉄道旅を楽しむゆとりが欲しい。
ところが、その特急が止まる駅が、なんと無人駅だ。各駅停車の駅が無人化になるのはもはや珍しいことではない。北海道では、感覚的に駅の半分が無人駅という路線もある。根室本線の西半分がそんな感じだ。「本線」である、支線ではないのだが・・・。四国でもその鉄道事情は変わらないと思っていたら、もっと事態は進んでいた。

駅舎を見ると普通に立派だが、中に駅員さんはいない。きっぷ売り場も委託になっているが、どうも1日のうちかなりの時間は閉まっている。自動券売機で切符を買うか、列車に乗ってから車掌と交渉するしかないようだ。でも、乗るのは特急なのだよ、と言いたくなる。当然、特急券を買うための緑の窓口もない。北海道であれば、人口より牛の数の方が多い町はある。駅の周りに人が住んでいないことも多い。しかし、この漁師町はまだまだたくさん人が住んでいる元気な町なのだがなあ。

単線特有の、駅を抜けたら上り下り線が交流する鉄路。それでも、鉄道があるとないとでは人の流れが変わるのだろうなと思うが、この町に住む知人・友人も鉄道を使うことはほとんどないようだ。確かに、高速道路が開通した後では高知まで車で移動して1時間を切る。もはや鉄道は交通弱者のものでしかないから、社会保障の一環みたいなものなのだろうか。

最近見たテレビの旅番組で、路線バスを乗り継いて四国をぐるっと回る難関旅が放送されていた。その中にここの駅が登場した。愛媛から山の中をくぐり抜け、高知を目指す行程だった。ここの駅前でコミュニティーバスにのりつぎ隣町に行く。そこから高知駅まで路線バスで移動ということだったが、そもそもこの駅にバスが来ていることすらよく覚えていなかった。
せっかく来たのでバス路線と時刻表を撮ってみたが、思いのほかバスの便数が多い。便利というには程遠いが、役所に行くなど公的機関での用事で役所に行く時には役立つ。その程度には往復が確保されている。
これも自動車の完全自動運転が完成すれば、また変わっていくのだろうな、など遠い未来に思いを馳せたのが、特急が止まる無人駅のことでありました。