
コロナ仕様で作られたおひとり様用カウンターのスペースはちょっと狭い。肴を一皿と飲み物を置くと、ほぼほぼいっぱいになってしまう。ただ、ひとり飲みであればそれで良い。カウンターに何皿も料理を並べても、冷めてしまったり食べきれなかったりするだけだ。一人飲みの時は、一つ食べたら一つ追加をするくらいの方が正道ではないか。

葉牡丹では熱燗が出る。それもかなり熱い。土佐を代表する二銘柄を順番に注文して味比べをした。飲み比べをすると自分の好みがわかったりするのでなかなか楽しい。結論として、しばらくは土佐鶴派で行こうと思う。
高知の日本酒は比較的重たい味だと思っていたが、最近は少し変わってきたのかもしれない。さすがにすっきりというまでにはなっていないが、それでも飲み口はさらっとしている。コップで飲む日本酒は、猪口で飲むよりうまい気ようながするのは「ダメ人間」の証拠かもしれない。
そして、お銚子とジョッキはどうやら最後まで下げないらしい。飲みすぎたダメおやじの会計トラブル防止のせいだろうか。それとも、何本飲んだかわかるようにして、飲み過ぎ注意を警告するためだろうか。

少し強めに感じる日本酒に合わせるのは、魚よりも肉が良いなと思う時がある。あまりにも外が暑かったせいで、暑さ負け防止に肉を食うかという気になったこともある。餃子という手もあるかと思ったが、素直に好物である「親どりの足」を頼むことにした。
香川県高松(丸亀)では支配的な勢力を誇る骨付鳥の、高知版というかアレンジ版だ。カリッと上がった皮の中には親鳥特有の歯応えある肉が詰まっている。あらかじめ細く切ってくれるのはありがたい。これを丸のまま出されると、歯の強度検査みたいな食べ方になる。某フライドチキンチェーンの若鶏とは究極の反対勢力だが、これがうまい。このうまさがわからないやつは「親鳥」を諦めて「若鶏」にしなさいというしかない。

壁に貼ってあるメニューも本日のおすすめというわけではない。どれも定番ばかりだ。見やすいかというと、そうでもない。これを見るためには、カウンターから反対側を向かなければならない。回れ右をしなければ、首だけ180度回すという苦行をする羽目になる。改めて、この店の売り物は焼き物、串揚げだったと気がついた。

もう少し食べてみたいなとメニューを物色しているうちに思い出した。この店は酢豚とオムライスが超絶的にうまいのだ。さすがにオムライスと両方は頼めないので、泣く泣く酢豚にした。これも量が半分くらいだったら酒の肴にちょうと良いのだが、といつもの愚痴になる。酸味が強めで濃い味の酢豚だ。お江戸の町中華によくあるサラッとした酢豚とはちょっと違う。肉も多い。
一番の違いは、具材にきゅうりが入っていることだ。きゅうり入り酢豚は奈良でも食べた。きゅうりは西日本系の具材なのかもしれない。キクラゲが入っているのもちょっと珍しい。ただ、キクラゲのコリコリ食感とタンパクな味は酢豚向けだと思う。うん、やはりこのうちの酢豚は好みだ。某大手中華チェーンは見習ってほしい。
この店ではまだまだ食べたいものが多いが、一人で来るとこのあたりでもう入らなくなる。いつも同じパターンなので(学習能力が足りないため)一向に前に進めない。次回こそはと反省しながら帰るのも、お決まりのパターンになってしまった。自分の定番居酒屋というのは、どこに行っても反省と後悔しながら帰る、こういう使い方になるのだろうな。