書評・映像評

ラノベのあれこれを考えててみた #3 「何か?」の続き

Photo by Emiliano Arano on Pexels.com
主人公は巻き込まれてから活動をするのがお作法だが (写真はイメージです)

話は少し逸れるが、現代の新しい物語の形として考えるべき、RPGと呼ばれるゲームではこの英雄譚の変形が主流だ。基本的にゲーム内の世界は、第三者視点(神の目)で見た神話もどきのファンタジー系であり、活字メディアのラノベ系と極めて近しい。
RPGのストーリーはこれまで述べたような「同行者との旅」と、そのサイドストーリで構成される。大作になれば同行者が膨大に増え、多数の中から選択できるようにもなる。サブストーリの数も物語の分岐として増える。
ところが、最近のゲーム界のヒット作では「ソロ活動」で支援者ゼロという旅ものが多くなってきている。ただ、どうもこれは物語として相性が悪いようで、「一人称視点」での戦闘ゲームへ別系統ものとして進化していった。ただし、一人称視点では物語性が足りず、そこを補うためにところどころに状況説明シーンを挟む必要がある。
ラノベの中でも、一人称語りの話は増えてきたのは、このゲーム世界の変動が影響している気がする。ただし、ラノベキャラの視点は微妙に第三者視点が混在する。書き手が世界の創造者だからこその混在だ。

ところが、ラノベと時代を共有してきたゲーム界でもう一段の進化が起きた。ゲームで操るプレーヤーがストーリーとは関わりがない行動を取れるようになり、世界を彷徨き回る「オープンワールド」という仕組みが一般的になったことだ。
完全な一人称視点で、ストーリーを無視した「遊ぶ」世界が展開された。ドラゴンクエストなどに代表される、初期RPGは多少寄り道はしても、基本はゴールに向けて一直線に進む物語だ。ボスを退治して物語世界は完結するのがお約束だった。ところが、最近の大作RPGは、ゴールはあるが、ゴール後もその世界をほっつき回ることが可能という設定になっている。物語がゴールまで続く直線、一次元世界だとすると、ゲーム世界にはゴールはあるが周辺に広がって行動できる二次元空間ということになる。

ラノベとゲームは互いに影響し合い共進化を遂げてきた。ラノベの読者とゲームプレイヤーは、ほぼほぼど重なり合った層になっているようだ。その結果として、ラノベ(テキスト)とコミック(画像)とアニメ(動画)とゲーム(疑似体験)が一体となって成立するビジネスモデルが出来上がった。
ラノベも読みコミカライズされたコミックを買い、アニメ化作品をフィギュアと共に楽しむ。売り手は一粒で何度でも商売ができる「美味しい」鉱脈を発見してしまった。
当然、その連鎖反応の開始点であるラノベ(テキスト)形態も、将来的に複合メディア化できるように整えられる。登場するキャラは性格づけと共に、メリハリの効いた体型や種族のバリエーションが必要だ。全て登場人物が日本人ではいけない。主人公を日本人にするとしたら、男女・年齢・体型、出身地(言葉遣いや方言)で区別をつけなければならない。
普通の地方都市にある高校から一クラスを異世界に転生させるなどという荒技も最近よく登場するが、そうなるとリアル世界ではあり得そうもない特殊キャラ、つまり普通ではない高校生を30人近く作り分け登場させるハメになる。一つのクラスの中に、悪者も含めた社会の縮図を作るというのは、文字だけの話作りとしては無理がある。
それを描き分けるのが嫌なら世界設定を変えて、「悪の秘密結社」戦闘員A、戦闘員B・・・のような没個性キャラにするしかない。ただ、これでは物語が進まない。戦闘員Aの悩みや人生観に感情移入できる読者は少ないだろう。
だから、すでにラノベは文字単体のメディアではなく、複合したメディアを意識した作品づくりが要求される。ネットで好きなように文字を紡いで小説を書き上げても、それが「出版」される段階から、新・メディアビジネスモデルの洗礼を受ける。
ラノベは映像化、動画化、できれば実写化までを見込んだ現代エンタメ・メディアの基礎であり出発点になっている。
もう一つの複合メディア・立体化の開始点は「ゲーム」になっている。当然、ラノベとゲームは互いに影響し合っている現在進行形で進んでいるが、ゲーム世界の方が物語構築ツールとしては少し先を行っているようだ。

【続く】


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