書評・映像評

ラノベのあれこれを考えてみた #2 口語文体としての『何か?』

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アメリカンヒーローといえば、夜の高層ビル街がお決まりらしいが(写真はイメージです)

題名の「村人ですが 何か?」についてちょっと考察する。ラノベの題名が年を追うごとに長くなっている。ラノベ第一世代の題名は、それなりに小説らしいものがほとんどだった。「〇〇の旅」とか「〇〇の憂鬱」など基本的に2単語の題名が多い。たまに「〇〇の——— とんでもない理由」みたいな題名プラス惹句というパターンもあった。それが第二世代になると題名というよりあらすじ的な説明文になる。
典型的なのは「〇〇ですが何か?」「あれこれxxxして、〇〇になった件」のようなもので、最近では題名だけで100字近くになるものまで登場している。
ネットで見た解説によると、長い題名はネット投稿から生まれた「ネット小説」の特徴で、読者が投稿小説のリストを見るときに、話の中身が簡潔に説明されている方が選択されやすいということらしい。確かに、「紫の復讐」などという抽象的な題名よりは「長耳エルフが烈火龍の咆哮に耐え世界を取り戻した件」の方が、登場人物や対抗勢力の想像がつきやすい。特に、エルフ好きやドラゴン好きには魅惑の題名に思えるだろう。
SFでも「アンドロイドは電気羊の夢を見る」とか「あなたに、神のお恵みを」「たった一つのさえたやり方」のような短文的題名の名作があった。翻訳の都合もあったのかもしれないが、長めの題名は斬新感があった。ちなみに当時の日本SFの巨匠たちの作品は、ほとんどが「〇〇のXX」的なものだったので、翻訳SFを目立たせる対比として短文題名だったのかもしれない。

さて、「村人ですが、何か?」についてを考察する前にラノベのお作法について、いくつか確認しておく。まずは、ラノベのお手本というか先行形態のファンタジー小説について確認する。
ファンタジー系のお話の定石は、勇者が世界を救う旅をするということだ。インドの神話、ギリシアの神話、メソポタミアの神話、古今東西ありとあらゆる文明で語られてきている物語の原型は、英雄が世界を救う旅をした後、最終的に悪を滅ぼす物語と断定して良いだろう。それが神話冒険活劇・物語のアーキタイプ、原型であり、追加パターンとしていろいろなバリエーションがつく。
まずヒーロの素性に関してバリエーションが生まれる。英雄が生まれる経緯が、神様の落とし子だったり、ただの村人が精霊と合体したり、復讐に狂って悪魔になったが何故か改心したりなどなど、英雄誕生の理由はさまざまだ。ただ、基本的に英雄とは神の恩寵を受けた特殊な人扱いで、並の人間が苦労の末に成り上がるものではない。
また、旅の同行者が、あれこれおこす事件や、過去のしがらみが原因で、必ず旅に付き纏う。というか勝手についてくる。この同行者パターンは3つほどある。悪人に囚われている女性や子供などを救った後で、その救った「弱きもの」が無理矢理ついてくるのがパターンその1。
異常能力者、賢者など常人を超えた能力を持った強者が、何らかの制約で悪者に操られたり手下になっていたのを、戦いを通して解放した結果、制約条件が主人公にうつり(いやいやだったり、感謝したりして)ついてくるのがパターン2。
パターン3はその変形で、モンスターや魔物、人族的体型を取らない異族(天使とか悪魔、妖怪を含む)が、好奇心だったり受けた恩だったり、あるいは古き誓約を果たすために同行する。これは犬形態、虎形態、竜形態などがある。
物語の最初から最後まで英雄がソロ活動するというお話は読んだことがない。だいたい物語の冒頭でパターン1が発生し、半分より手前でパターン2あるいはパターン33が起きる。その結果として、物語後半は3−4名のパーティー活動になり、お約束のようにパーティー・メンバーの一人か二人がいなくなったり、裏切ったりする。
そのパーティー分裂を解消しながら、最後はラスボス、つまり制圧目的の退治で任務完了という流れだ。神世の時代から変わらないヒーローものの鉄板展開で、人類のDNAに刷り込まれたとも思える「英雄譚」のアーキタイプだろう。

そしてファンタジー小説・物語の正統後継者たるラノベも、この典型的な原型・アーキタイプを保持している。このアーキタイプを忠実に守っているラノベ(小説)が、10巻20巻と超長編変化している。(グインサーガーのようにギネスに乗るほど長いものまで生まれた)
逆に、アーキタイプから外れた作品は2巻で打ち止め、3巻で終結することが多く、セオリーを守らない実験作品は人気が出ないということのようだ。多くの読者は、設定は新しいが、話の筋はマンネリという作品を好むということだろう。身もふたもない言い方をすれば、永遠の「水戸黄門御一行旅」こそが、ラノベのヒット作として求められている。

【続く】

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