街を歩く

新宿のオアシス

今年の年初に、まだコロナ自粛規制が厳しかった頃、たまたま気づいた感動の看板の店の前を通りかかった。普段であれば見過ごしてしまうような壁にはられた看板についつい見惚れてしまった。ストレートというか豪速球というか、広告コピーとして捻りのないストレートなものだが、こういう文句に心がやられるということはたまにある。1970年代後半から80年代、いわゆるバブル時代開始直前はこういうコピーが流行った時代だった。
最近は80年代が復古しているそうだから、広告の世界も先祖返りを起こしているのかもしれない。当時の広告などはデジタル化されていないので、記録を遡ろうとすると、誰かがデジタル化したアーカイブを探し出すか、そもそもの資料探索の原点に戻って「原書」「現物」を古本屋や図書館から探し出すしかない。
リアルタイムで時代の記憶がある人間は、もはやすっかりジジイババアになっているので、当時の事情など聞いて回るだけでもたいへんだ。

ビールで感動した記憶がほとんどないので、ここにある「感動まであと数歩」には心惹かれる。なので、あと数歩歩いてみた。

いやいや、参りました。「美味しいお酒、時間は夜だけじゃない」という昼呑みの薦めは初めて見たが、これはすごいぞと思った。隣の「あなたの美味しいはきっとみつかる」。キーワード「美味しい」、これがこの看板の左右で対になっているのだ。何よりもすごいと感心したのは「あなたの美味しい」と、個々人の味の好みを絶タウ肯定していることで、当店自慢のうまさとか、食べログスコア4点以上とか、そういう他人様の評価に寄りかかっていないことだ。自分のうまいものは自分で決めろ!という、ある意味正しい飲食店からの応援メッセージだろう。

入り口付近の看板は、ちょっと入ろうかどうか迷った人向けに、最後の一押しをする優しさだった。「今日も1日お疲れ様でした」でぐらっときて、「帰り道の給酔所」でニヤッとする。どれ、それではお薦め通りに給酔していこうか、という魔女の誘惑みたいなものだ。
相変わらずだったのは「2Fにも感動あり」で、これは実際に確かめた経験があるから、看板に偽りはないのだ。この日は昼呑みしている暇もなかったので素通りになってしまったが、近々リベンジ襲来してやらねばと思うのでありました。
ビールで感動してみたいぞ。

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