コロナの最中でも外食企業の中には新規業態を試す頑張り屋さんが存在していた。ずっと気になっていたのだが、外出自粛のムードの中で伸び伸びにしていた「新店視察」にでかけてみた。

とろろそばの専門店というので、どんな外見になるのか興味があったが、一見してファストフード的なファサードなので、あれっという感じがした。店頭の垂れ幕を見ても、税抜、税込みの価格が混在する二重表記が気になる。ファストフードの店頭情報は少なければ少ない方が良い。本来的には税込み価格一本で表記することにして、それで価格設定をするべきだと思うのだが。
この価格の二重表記はファミレス的手法だなあなどと思いつつ、店内に入ってみた。

注文するのは、定番メニューらしき「とろろそば」と思っていたが、辛ネギトッピングがあるので、ついつい辛ネギそばを頼んでしまった。
出てきた商品を見て、まずびっくりしたのが、芋が細かい千切りになっていたこと。とろろ蕎麦というから、すりおろした芋が乗っていると思い込んでいた。これにはどんな意図があるのだろうと、あれこれ考えながら食べ始めた。確かに千切りなので蕎麦つゆに溶け込まないから味が一定なのと、芋のシャキシャキ感が楽しめる。これはこれで創意工夫だなと感心した。ただ、個人的にはすりおろした芋のヌルヌル感を期待していたので、そこはちょっと物足りない気もする。
辛ネギは、辛味が強く自己主張がしっかりしたものだった。よくラーメンに乗っているネギを細く切りましたけど文句あるか的な、ネギだけで調理技術なしというものではない。混ぜ込んだ辛ダレがしっかり調理をしている「技アリ」なものだった。ただ、普通のそばに合うかというとちょっと考えてしまう。いわゆる、肉そば系つけ麺であれば、この辛いネギこそのフィット感があると感じた。

店内は、流石にコロナ感染期に開店した店舗ということもあり、通路を含めた広い空間がとられている。駅前の立地にありがちな、席をぎゅうぎゅうに詰めた感じは全くない。盆栽らしき鉢植えがなんともオシャレ感がある。上野あたりの蕎麦屋で見た記憶があるが、盆栽は蕎麦屋には似合う装飾だと思った。これがレンタルの観葉植物だといささか残念感が出るのかもしれない。

テーブル席がなくカウンターだけというのは、なかなか斬新なレイアウトで、都会的なイメージがある。BGMもジャズがかかっているのだから、夜になるとスタンディングバー的な雰囲気が出るのだろうか。アフターコロナでは、昼夜二毛作に進化するのかもしれない。
しかし、店名に「東京」を冠しているのだから、やはり何か思い入れがあるのだろうなと思いつつ、半年くらい経ったらまた変化を見に来てみたいと感じた。なんというか、ひょっとしたらだが、大化けして大チェーンになるのかもという予感が……しなくはない。