街を歩く

外食DX考察 デニーズ

デニーズはアメリカンで小洒落た朝食の店という思い込みがある。お江戸に出てきた頃、北海道には存在しなかった「シャレオツでカジュアル」なレストランという刷り込みがされてしまった。すかいらーくよりはデニーズだよな、などとなんの疑いもなく思い込んでいた。そのデニーズがラーメンやら、マグロ丼やらを置くようになり、すっかり足が遠のいてしまった。業界知識もそこそこあるので、業績の浮き沈みに合わせて経営トップが交代し、その度にメニューから商品提供方法までガラッと変わるのが特徴の会社でもある。ビジネスの連続性と言う意味で外食としては異色なブランドだと言う認識があり、多少批判的になっていたたこともある。ただ、ロイヤルホストがホテルで食べる洋食だとすれば、デニーズはなんでもありの大衆食堂ではなく、カジュアルなレストランというイメージがあるので、大衆食堂化は残念だったのだ。
それでも、アメリカンな朝食はデニーズという「イメージ」が自分の中では固定化されている。確かに卵の料理法をあれこれ頼めるのはデニーズだ。サニーサイドアップではなくターンオーバーでと頼めるのは、ここしかない。(まあ、ロイヤルでもたのめばやってくれるとは思うが…………)

久しぶりにわざわざデニーズに朝食を食べに行った。メニューブックを見て、ああ、昔に戻ったのだなと思った。グランドメニューと朝食メニューが一冊になっていたからだ。要するに、メニューブックは全時間、起きっぱなしになり、時間帯によってメニューブックが変えられることもないということだ。これは従業員に対する負荷が下がる。オペレーションの改善だ。だが、客から見ると昼しか提供していないメニュー、朝食の専用メニュー、そして朝食時間帯には提供されないであろう定番メニューが混在した情報となっている。簡単に言えば、見るのが面倒臭い。いらない情報が多い、となる。
これがデニーズ式のアフターコロナ対応なのかと、いささか残念になった。メニューブックが一冊になった以外には、店内に何も変化がない。アクリル板の間仕切りはある。各テーブルに電源コンセントは設置された。しかし、セブン&iグループ全体で無料wifiサービス 7スポットを停止したので、wifi接続はやたら面倒くさい手続きが必要になった。一言で言えば、デニーズはアフターコロナ対応でサービス低下を起こしているということになる。
注文用にタブレットを置かないというのは、それなりの理屈があるのだろう。7グループの一員だから、情報投資をケチっているとも考えにくい。注文は従業員が取りに行くというスタイルを重要視しているのかもしれない。ただ、その従来のスタイルを守るということと、今の客が求めているものとのチグハグさが感じられる。

メニューブックの中身がどう変わっているのかは、運営方法に対する興味とは全く違うので、ここでは語らない。ただ、大きな方向感としてハンバーグを主力に野菜とバランスの取れた食事に戻るようだ。また、和食や丼に偏りすぎた商品を洋食寄りに戻していくつもりらしい。多少なりとも変化する意思は感じられる。ただ、それだけで、現在の価格帯(ファミレス業界では高め)を正当化できるほどオペレーションが磨き込まれているか。そのあたりが成否の鍵だろう。
対顧客でのDXは感じられない。ちょうどテイクアウトメニュー(冷凍調理品)の販売が始まっていたが、店内のどこを探してもその手の表示・展示が見当たらない。(メニューブックの中には書いてあるが)物販をやる気があるのか、販売ノウハウが足りないのか、その辺りも今後の確認事項だろう。

コロナ拡大が始まった2年前は、ちょうど禁煙対策が法的に強制された時期にあたる。その前の中途半端な分煙設備が取り除かれないままだった。つまり開口部があり喫煙室側から煙がダダ漏れの分離壁がそのまま残っている。これを見て思い出した。禁煙席にいながら流れ出してくるタバコの煙で臭いのが嫌で、デニーズに行かなくなったのだ。改めて見ると分離壁の横にポスターが掲示してある。なんだか分離壁にへばりついた変な位置だなと思ったが、よくよく見ると分理壁設置前は壁の中央位置にあったのだろう。そのポスターを撤去もせずに「壁」を作った後も、ポスターの位置を直しもしないで貼りっぱなしにしていたということらしい。
そして、2年前に完全禁煙にした後でも、分離壁は撤去もされず残したまま。ビフォー・アフター比べてみても、なんということでしょうだ。おそらく店内に分離壁を設置するときに本社の施工部門担当者が、図面だけ見て場所を決めたのだろう。そして設置工事前、後の現場確認作業をしていない。だから、ポスターの位置のおかしさに気がつかない。店長やスーパーバイザーもこの店内調度のおかしさに気がつかないか、あるいは本社のやっていることだから文句はつけないようにしようなのか。どちらにしても、「変な店」が残っているのは確かなことだ。
なんだか、デニーズのアフターコロナは前途多難のような気がしてきた。普通の店を普通に運営することからやり直さなければいけない。これは相当にハードルが高い「業務改革」だろう。現場が疲弊しているのも確かだろうし、現場を見ない習慣ができているのも恐ろしい。

卵にトーストという「当たり前の朝食」が、当たり前に出てきて、普通に美味しいのはやはりレストランとして重要なことだ。今回も美味しい朝食だった。卵の出来はさすがだ。
今の朝食時間帯のデニーズは、なかなか仕事をするのに居心地の良い空間であることは間違いない。ただ、もう少し客が戻ってきて活気がある店になった方が、「食事空間」としての居心地が良くなりそうな気がする。それはDXとは無縁の良いオペレーションがもたらすものなのではないか。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中