
コロナ感染拡大の2年で一番迷走していたのは、このブランドだったような感覚がある。ただ、それも対応が早いという意味では正しい試行錯誤だったのかもしれない。試行錯誤を未だに続けているというか試行が止まらないというのも正直な感想だ。

このブランドで好みを言えば、㐂伝ラーメンになる。発売以来好きなメニューなのだが、おそらくスープベースの違いだろう、このラーメンは定番から排除されたり、期間限定で再販されたり、またなくなったりする「大迷走メニュー」だ。ただ、最近は定番で落ち着いたらしい。
季節メニューで言えば、夏の冷やし中華もあまりリニューアルされることもなく毎年同じ見え方で登場する。ただ、毎年出るたびに値上がりしているという気がする。今年はついに700円間近で、定番メニューと比べて一際高い(幸楽苑としては)価格設定だ。この辺りの準定番メニューの出し入れが、実に下手くそだと思ってしまう。他のレストラン各社との違いが目立ちすぎる気がする。
どうもメニュー開発の基本思考がファストフード的すぎるのだ。同じ「麺業態」のリンガーハットも同様な傾向はあるので、ファミレスというよりも、「テーブルサービスのついたファストフード」と業態定義するのが良いのかもしれない。

その幸楽苑が、ついにタブレットで注文を取るようになった。そのついでにというか、「非接触」対応と言っているが、水のセルフサービスを開始した。卓上から水ポットが消えた。回転寿司のようにテーブルの上にカップを置くという発想はないようだ。非接触コロナ対応を理由に語るのであれば、客がマスクなしで水を求めて歩き回る方がよほど考えるべき課題のような気もする。
タブレットを使用して注文みるとわかるが、ファストフート的な作り込みなので、予想以上に使い勝手は良い。ただし、注文確定の部分はもう少し改善が必要だろう。

ラーメン屋としては当然だが、デジタル対応拒否層であろう中高年男性向けに紙メニューも設置している。ただし、一枚にまとめようとしているから、見にくいし混乱しやすい。この使い勝手の悪に紙メニュー問題は、麺業態の「山田太郎」でも同じような対応なので、業界標準的な仕組みができるまでもうしばらくかかりそうだ。
ファミレスでタブレットを先行導入したガストの事例が、業界で共有されるまでまだまだ時間がかかると言うことだろう。それが麺業態にまで染み渡るには、年単位の時間が必要なのかもしれない。ただ、そこまで業界が持ち堪えられるかと言う疑念もある。


その疑念の原因が、店頭にあったPOPスタンドだ。本来、デザートなどの追加注文をひきおこすための卓上ツールだが、そこにあるのが「食器」販売だった。強烈な幸楽苑ファンであれば、ロゴ入りのどんぶりも欲しくなるのだろうが。(自分はいらない)
おまけに、同じ場所にテイクアウトやら、麺の宣伝やら、内容がてんこ盛りで読む気が失せる。そして、笑ってしまったのが、4面あるPOPスタンドの一面を他社に販売するらしい。だったら、店頭のポール看板の下にもう一面看板を設置して広告画面として売りに出したらどうか?
アフターコロナの対応は店内オペレーションのDXと顧客との接点・接客部分の合理化が重要課題であることに間違いはない。また、テイクアウト事業の強化も含まれる。しかし、店内の手抜きをDXで言い訳したり、デジタル対応できない客層への対応をおもんばかりすぎてデジタル対応を中途半端にしてはいけないだろう。ましてや、本業以外の商売にむやみに手を出すのは多角化でもなくデジタルトランスフォーメーションとは程遠い。
まだまだ、このブランドの試行錯誤は続くようだなあ。20年近い極小株主として見守るつもりなのだが。頑張ってほしいぞ。