
狸小路が観光名所かというと、ちょっと違う気がする。外国人観光客が跋扈していた時代は、2丁目から6丁目あたりまで、段ボール箱をキャリーカードで引っ張る人向けの店が立ち並んでいた。ドラッグストアが30mおきに営業していた。今や、そのドラッグストアも大部分が撤退し、跡地には色々と面白い「日本人向け」店舗が出来上がっている。コロナで消えた外国人観光客特需だが、日本人向けの商売が成立するのであれば、特需も不要だろう。要は知恵が足りない商売人が多すぎたということだ。
そんなアブク銭商売とは無縁だったのが、狸小路7丁目だ。
ススキノとは違う、ちょっと尖った飲食店が次々とできて、オフ・ススキノとでもいうべき「面白ゾーン」になっている。歴史あるクラシック喫茶が閉店したのは3年ほど前だと思うが、その跡地にもどうやら喫茶店が入居したらしい。この隣はビリヤード場がある。それも映画の影響で流行ったプールバーではなく、まさにビリヤード場だ。ポケットのあるナインボールよりも、ポケットのない4玉の台が多かった。

コロナの時代は昼営業をしていた居酒屋も、どうやら通常営業というか、夜営業に戻ったらしい。それでもTake outの看板を外していないのが、後遺症の深刻さを感じさせる。オフ・ススキノではあちらこちらに個性的な料理を出す店があるが、この店は豪速球の魚居酒屋で、店長の趣味が競馬という正統居酒屋だから、復活後も元気に営業してほしい。
老舗の和菓子屋もあるのが狸小路らしいというか、カオスな雰囲気がする。この和菓子の店が知る人は知る名店で、串団子が絶品だ。団子が柔らかいのと、あんの種類が豊富なのが魅力だ。
あまり目立たないが2階に喫茶コーナーがある。札幌では珍しい甘味喫茶なので、昼下がりの暇そうな時間を狙って、クリーム餡蜜や団子セットなどが食べられる。団子とコーヒーのセットというのは、なかなか他では食べられない魅惑のセットではないか。みたらし団子とブラックコーヒーという組み合わせには、ちょっと震えがくる。ちなみにこの店では、謎の北海道菓子「中華まんじゅう」も売っている。隠れ札幌土産として推奨したい。



7丁目の怪しい楽しさは、観光客には知られたくない「秘密」の札幌だと思っているのだが。