食べ物レポート

低温調理という技術

コース料理が肉づくしだと、少量ずつ出されても、途中でかなりの満腹感になる。コースの最初から最後までの重量を足しあげても、普通のステーキには届かないような気もするが、やはり「肉」に圧倒される年齢になったというのもあるのだろう。
中盤ですでに満腹中枢が危険信号を発していた。それでもタンとフィレの2点盛りは魅力的で・・・。肉自体はシンプルな仕上げで、ハーブとソースでさっぱりと食べる。真ん中にあるのは玉ねぎの付け合わせだが、これもトロッとシャキの中間点にあり、歯触りと甘味を楽しむ良いアクセントだった。
ただ、サーロインの後だけに、「肉」のパンチ力がある。というか、ありすぎる。これが、コースの中で一番「ニクニクしい」一皿だった。
和食ではあまり使われることのないハーブだが、肉料理にはハーブがよく合う。このあたりの「肉肉」しさと味付けのバランスは、やはりプロの技なのだ。感服するしかない。

次の品が、牛肉の部位違いを塩や醤油麹で食べ比べしましょうというご提案だが、実はこの皿を最初の方で出してほしかったなあというのが正直な感想だ。この時点で、お肉はもう十分でございますという弱気モードになっていた。
シンプルな調味料で肉を楽しむのは、舌も腹も元気なコースの最初でお願いしたい。逆に後半であれば濃い味付けの方が、平らげやすいかなあ、などとちょっと個人的な不満だ。
ただ、舌は正直で、この肉はうまいぞ! と伝えてくる。ハムやチャーシューの硬さは全くない。ナイフはいらない柔らかさだが、噛みきれないわけでもない。肉の味がそのまんま出てくると言う感じがする。塩で食べたのが一番好みだったが、ソースとしては醤油麹も良いバランスだった。

締めに出てきたのが、肉もりもりのTKG。肉ビビンパだとのことだが、これはやはり卵かけご飯だよ。それも暴力的な肉パンチが効いたご飯だ。肉にはご飯が一番合うと思い知らされたが、この時点で一膳のご飯を完食するのが危ういほど満腹になっていた。低温調理の肉はジューシーで柔らかく、丼飯にはよく合うのだと再確認した。しかし、これが最後に出るというのは、ほとんど反則技だろう。

最後に、デザートとして、季節柄なのか桜のアイスクリームとほうじ茶が出てきた。もう立ち上がるのも嫌なくらい満腹なはずなのに、冷たいアイスクリームだと入ってしまう。
計算が尽くされた肉コースだった。肉食女子にはピッタリ、肉食男子にはちょっと物足りないかもしれない。ただガツン系肉食男子は焼いて食う焼肉屋に行けば良いのだ。一番ダメなのは非・肉食系高齢男子なのだなと、ちょっと悲しくなった。一皿ずつは少量なので減らしようがない。となると皿数を削ってもらうしかないのだが、それだとバラエティが・・・みたいな困った客になってしまう。もう少し若いときにきたかったなあ、という「おいしい」のに「おしい」お店でありました。

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