
この「バスあいのり」という場所は、紀伊國屋本店の裏側にある。何とも不思議な施設で、同じものが銀座でも見かけた。想像するに、ビルの建て替え立地(現在隣の土地を地上げ中など)に、簡易型の建物を作り営業している業態らしい。サイトを調べてみると、高速バスの空きスペースを使って全国から地方の特産物を配送。販売するサービスのようだ。その特産物を販売する期間限定拠点ということなのだろう。

この日は、客席?にティピー型のテントを張って、そこで色々と飲食できるという仕掛けだったらしい。面白いとは思うが、いかにも東京らしい。このやり方は東京だけで通じる、全国各地の大都市ではなかなかうまく行かない仕組みのような気がする。東京人の半分以上が、全国からの流入、漂白移住民なので、だから逆に全国のあれやこれの風物に寛容だと思う。受け入れる土壌がある。
全国の地方大都市は、その地域の中心であるが故に地域住民がほとんどなので、よく言えばまとまりがある。悪く言えば排他的文化の核だ。大きな「オラが村自慢」の場所となる。
全国にある他地域の良さを肯定できるか。その寛容さがなければ、見ず知らずの土地のものを使った商売が成立しはしないだろう。沖縄でジンギスカン屋をやるとか、北海道で沖縄そばを販売するとか想像してみると理解は早い。地域性を無視した商売は地方ではなかなか難しい。ハイブリッドな東京で、それも新宿や銀座だから成立する商売なのではと思う。何十年経っても、東京は不思議な街だ。

ヨドバシカメラも、新宿を象徴する商売だと思う。個人的に大の家電好きなので、暇があればヨドバシに行ってショッピングではなくショールームとして楽しんでいる。そのヨドバシカメラ(新宿東口)で、売り場の大改造が行われていた。そもそも一階とはデパートや大型モールでも通じる鉄則だが、その店で一番売れて一番儲かる商品を並べるものだろう。だから、ヨドバシカメラで一階の定番商品は、高級カメラを中心としたカメラ売り場だった。国内メーカーの一機50万円もする一眼レフカメラやプロ仕様の高級レンズが無造作に並べられていた。
それが、コロナ感染と共にインバウンド客がいなくなると、カメラがスマホの置き換わった。まあ、それは販売の主役が変わったので仕方がないとしても、それ以外の地滑り的主従交代がすごい。
カメラは別ビルという相当に売り場的には僻地に左遷された。2階3階という比較的好立地にいたパソコン、テレビなどは最上階近くという「負け犬」立地へ飛ばされた。一時期は一階にいたこともある、ワイヤレスイヤホンも同じく僻地に転勤になった。
いわゆる情報系家電が全滅した結果、一等地に栄転してきたのが、エアコンや調理家電などのグループだ。つまり「引きこもり」「おうち時間」需要がヨドバシカメラ、家電業界ですっかり主役になったということを意味する。コロナの影響を、一番実感した光景だった。たかが家電店の陳列が世界経済を表す時代なのだなあ。

あちこちで五月雨的に変わっている新宿だが、馴染みの居酒屋で入口脇に貼られていたポスターをみて、何と20世紀のライブ告知だということに気がついた。それも、この方はすでに他界されて久しいはずで。同じ新宿でも、ここには流れが止まった時間がある。
深夜放送でよくかかっていた「ぷかぷか」を聞いてみたくなった。でも、すでにLP版レコードは処分してしまったし、どうやって手に入れようか。頼るはAmazonになりそうで、これが二十一世紀の音楽を聞くお作法なんだと、ため息がひとつ出てきた。