
東京メトロ東銀座駅、歌舞伎座のあるあたりを銀座というのかどうかはちょっと微妙だが、銀座三越からは徒歩圏だし、同じ距離を銀座の反対側に歩けば築地になるので、やはり銀座の際ということで良いのかと思う。歌舞伎座も立て替えしていたような気がするが、それも随分前のことだったようだ。気がついたのは、歌舞伎座の後ろに高層ビルが建っていたことで、近代ビルと伝統芸能の対比が、なんだか不思議な光景だった。

その東銀座、歌舞伎座の後ろにそびえ立つビルの裏手に、これまた昭和中期で時間が止まったような「古典的商店」がある。チョウジ屋という、おそらく肉屋のはずだが、自分の中では「パン屋」扱いの店になる。昼時であれば行列もできる、揚げたてメンチの入ったサンドイッチというか調理パンの店だ。
パンは食パンかコッペパンを選ぶ。そのパンに挟むものがメンチカツ、ハムカツ、トンカツ・コロッケなど自家製揚げたて熱々の具材だ。目の前で具材を揚げているのが見える。注文してからパンに挟んだ作り立てを買う事になる。

出来立ての調理パンを油漏れがしないように薄いラップで包み、それを包装紙で巻いてゴム留めという「The 昭和」なシロモノだ。この見た目だけで、コンビニサンドなど敵ではないとわかる「昭和無双」な商品だ。お値段はその場で手作りということもありちょっとお高めだが、ビッグマックよりは安い。個人的にはビッグマックより満足度が2段階ほど高い。コスパということを言うなら、こちらの方がハイパフォーマンスだろう。

家まで持って帰ってきたので、パンに多少しなしな感があるが、この厚みのあるメンチカツにかぶりつくと、口の中に幸せが広がる。いいもの食べているなあ、と言う満足感がある。わざわざ買いに行ってよかった、自分を褒めてやりたいと言う自己陶酔だ。
ちなみに、メンチカツに自家製ソース以外は何も足していないシンプルさだ。コンビニサンドに代表されるオーバーデコレーションな、キャベツの千切りが入っているとか、チーズソースがかかっているとか、自家製ブレンドのタルタルソースだとか、そう言う夾雑物は一切なし。清々しいまでのシンプルさで、これ一つで昼飯は大丈夫と言うボリュームもある。
下っ端歌舞伎役者が幕間に楽屋でひっそり食べていそうな「昭和のサンドイッチ」だ。これのコッペパンバージョンは、コロッケパンが一番美味いと個人的に思っているのだが、絵的に映えるのはメンチカツパンかもしれない。歌舞伎座に御用のある方はお土産にどうぞ。