
JR新宿駅から歌舞伎町に向かう途中にある、靖国通り沿いの雑居ビルのレストランというか洋食屋が最近の贔屓の店だ。洋食屋と言いながら、刺身盛り合わせや天ぷらも注文できる、昔のデパートの大食堂的なところが気に入っている。もちろん、良い洋食屋としての絶対的な条件である「おいしいオムライス」の存在が決め手であるのは間違いない。
私的おいしいオムライスの条件とは
1 卵焼きが薄焼きで、決してフワトロの厚いオムレツではない
2 ソースは真っ赤なケチャップで、決してデミグラソースなどではない
3 中身はケチャップ味のチキンライスで、バターで炒めていない
この三か条は譲れない。要するに昭和中期の松の食堂、貧乏洋食的な風情があるか、その正統的な生き残りでなければいけないという、極めて個人的な決め事だ。最近の美味しいと言われるオムライスの条件には全く当てはならない。

ただし、オムライスはしめに食べるものなので、まずはランチ定食の中から、やはりチープ系グルメであるハムカツ定食を頼んだ。この後に、オムライスを食べることを考え、ご飯は極小盛りでお願いする。その茶碗半分にも満たないご飯にソースをかけて、ご飯を酒のつまみに変えてしまう。ハムカツにもじゃぶじゃぶとソースをかけて衣がぐだぐだに柔らかくなるくらいにする。付け合わせのマカロニサラダやキャベツにも、ソースをかける。
洋食といえば、醤油ではなくソースをたっぷりかけて食べるものだ。漬物の小皿と味噌汁も酒の肴に大変身(意識の上ではということだが)して、オムライスの前の一杯の準備を整える。

暑い夏であれば、キンキンに冷えた生ビールという選択もあるが、まだまだ気温が低い時は小瓶の黒ビールか、冷酒の一瓶を選ぶことにする。洋食屋で一人飲みをしていると、まるで昭和の文豪のような気分になってくるから不思議だ。どうにも昭和の文豪のグルメ・エッセイを読みすぎたせいだと思う。「銀座のレンガ亭でオムライス」みたいな話が強く記憶に残っていて、文豪の通った銀座の名店にも何度か行った。だた、自分の身の丈に合わせると新宿の洋食店が似合うような気がしている。
次にこの店に行った時は、ピザとサラミでスタートして、オムライスで締めてみようか。まさに昭和な洋食屋の使い方、飲み方のような気がする。お腹に余裕があれば、(できれば)イカ天を追加したいものだが。