
すき家の姉妹チェーンというべきなのか、サイゼリヤのコピーコンセプトなのか、などと思っていた「オリーブの木」が、自宅近くにあったココスを改装して開店した。一度見てみたいと思っていた、低価格イタリアンレストランだが、神奈川県、東京西部あたりに店舗があったため、サボってみに行ったことがなかった。久しぶりに向学心が高まりお勉強に行くことにした。そして、結論を言うと、サイゼリヤのコピーではなく、低価格イタリアンとして秀逸なコンセプトに仕上がっていると感じた。個人的には、こちらの方が「良い」レストランだと思う。サイゼリヤが割り切って切り捨てた部分を、丁寧に拾い集めた感じがすると言えば良いのだろう。

イタリアンといえば、短絡的にパスタを思い浮かべるのが日本人的特性だと思うので、まずは定番トマト味のパスタを注文した。化学調味料の味が強すぎることもなく普通に美味しい。トマトソースの味もしっかりしている。パスタは硬めで、最近はヤリのもちっと系ではない。カルボナーラなどのクリーム系パスタはソースの加工度よりも生クリームの使用量で加減ができるので、そちらもチェーンの実力を図るには試食するべきだが、とりあえずトマト系は十分人気商品になる力がある。

ピザはサイゼリヤと比べると、さっくり系だろう。一般的なファミレスは「パン」のような記事が多いが、こちらはナポリ系に近い。リーンな生地と言えるほどさっぱりはしていないが、個人的にはこれくらいが好みだ。生地の仕上がりは、そのチェーンの考え方次第でいくらでも帰れれる。サイゼリヤはパンよりに仕立てている。こちらは、より「イタリアン・ピザ」の方向を目指しているという違いだ。
マルゲリータをバジルソースで逃げるか、バジルの葉を使うかは、チェーンの食レベルの差に直結すると思っている。バジルソースを使うと決めた時点で、なんちゃってピザ、ピザのようなものを容認するということだろう。
縁、エッジの焼け焦げを嫌う人も多いが、そこはしっかりと焼き焦がすべきだ。焼け焦げができないピザは工業製品で料理ではないと思っている。
という諸点から考え、このピザは間違いなく「良いピザ」認定とすることにした。

ムール貝の料理は、ビジュアルインパクトが強い。これをアサリの酒蒸しと比べれば歴然となる。料理は味も大事だが、最初の見た目で8割決まる。という点で、この盛り付けの多さも含め合格品だ。サイゼリヤでにたようなメニューはあるが、ビジュアルで負けている。
個人的には、貝の味として考えると、アサリの方がより味が濃いとは思うが、アサリではこの見栄えが作りにくい。おまけに、貝のみを食べる時にムール貝は大きくて撮りやすい。ファミレスに適した食材だろう。

アヒージョも自宅で簡単に作るのは手間がかかる料理だ。大量のオリーブオイルで食材をあげるというところはなんとかなる。しかし、アンチョビーが課題だ。一度開封したアンチョビーを使い切るのはなかなか難しい。2−3日連続でイタリアンメニューを続けなければならない。あとは小鍋でオリーブオイルを加熱すると、ものすごく周りに油が飛び散る。
ただ、オリーブオイルに溶け出した塩味と旨味がたまらない。中に入れる具材は、日通りが良ければなんでも良いが、キノコ類や鳥肉が合うと思う。このメニューは温泉卵を投入していた。これが予想を遥かに超えてうまいと感じた。卵とアンチョビー・オリーブオイルの絡みが想定外の美味さだった。バゲットをガーリック風味のついたオイルにつけて食べると、食欲が増してくる。逸品というべきだろう。

メニューをじっくり眺めていると、サイゼリヤとの対比が見えてくる。原料で大きな違いはない。サイゼリヤがオペレーションの簡素化のために落としたようなメニューがあちこちに目立つ。これが王者サイゼリヤを迎え撃つために研究した成果だろう。敵の嫌がることをやるはマーケティングの鉄則だが、それを忠実に実現している「オリーブの丘」はすごいのだ。
グループ本家のすき家は王者吉野家に対して、立地では都心部繁華街ではなく郊外ロードサイド、メニューでは牛丼専業に対して、トッピング牛丼とカレーで対抗した。それと同じ血が流れているような気がする。定点観測していくことにしよう。