回転寿司とカウンターの鮨は漢字を使い分けることにしている。単純な思い入れの違いと言えばそれまでだが、魚を旨くする食べ方が、にぎり「鮨」で、魚以外も使って米をうまく食べさせる「寿=ことほぎ」を司る料理が「寿司」みたいな気分だ。もちろん極めて個人的な理解だ。
だから握りではない機械整形の回転寿司に「鮨」の字は使わない。ただ、機械整形が悪いとも思わない。安くてうまい米料理というカテゴリーでは、牛丼やカツ丼など米主体メニューを押さえて、一番出来の良い「マスタークラス」だと思う。

その回転寿司に行って、寿司をあまり食べずに居酒屋使いをするというのは、悪行三昧というか外道の振る舞いと、我ながら思うのだがやめられない。まず、小型コンロであぶり焼きを頼む。一通り焼き物を堪能したら、熱燗ではなくやかん酒を注文する。この小型のアルミ製やかんで日本酒を提供するという居酒屋は何箇所か行ったことがある。
お酒の熱さを自分好みで適度に調整できるはずだが、だいたいぼーっとしたまま熱しすぎて、舌を火傷しそうな「熱々燗」になってしまうことが多い。個人的には失敗の多い残念な提供形態なのだ。しかい、今回はやかん酒ではなく、やかん「昆布酒」だ。慎重の上に慎重をかさね温度管理に注意を払う。熱燗のちょい手前で昆布の味?を堪能することができた。やればできる子だった(エヘンエヘン)。フグのひれ酒は熱熱燗だが、昆布酒はぬる燗程度が良いようだった。

そして締めは最近ハマっているイカ三昧にする。当然主役はゲソだ。マイカも外せないが、メインディッシュは甘だれが塗られたゲソに決まりだ。今回は他の頭足類には目も向けない。魚類など論外だ。カンピョウだの、お新香だの、植物系巻物も拒絶する。当然ながら新興勢力のマヨコーンやカニカマサラダ、ハンバーグなどはアウトオブ眼中だ。

そして、締め中の締めは、なんと「塩辛巻」。これも普通の回転寿司ではなかなか見かけない、チープだがリッチだかよくわからない軍艦巻きだ。ただ、結論を言えば塩辛巻は締めで食べるより、飲んでいる途中の箸休め的に食べる方が良さそうだ。塩味と米のバランス、特にシャリ玉が小ぶりなので、つまみとしての適性が「米の酒と米の肴」という点で、抜群に良いと思う。
などと考えること自体、寿司屋では外道な食べ方だとは思っているが、決して反省するつもりはない。逆にここ10年間、進化を続けてきた回転寿司業態は、こういう変形変態的使い方をする客によって、あらたな進化の道筋が切り開かれるというものだろう。などと自負しております。