
トラック野郎が長距離貨物の配達先で、ローカルな食べ物を楽しむという漫画が好きだった。その作中で青森のうまいものを紹介する会があった。登場したのがこの店だ。青森の郷土料理、ローカル名物を気取らずに食べられる場所としての紹介だった。ただ、その漫画は店名も所在地もはっきりと書かれていないので、ネットであれこれ調べてお店を見つけ出すという、宝探し的な手続きが必要だった。ようやく見つけ出して無事食事にありついたのは3年前だった。
自分の中では帆立料理屋扱いなのだが、地元の人にとっては定食屋で丼屋でラーメン屋だろう。

今回は鉄路旅なので、お酒を楽しみながら料理を堪能できる。どうも季節限定メニューらしい「ホタテのヒモ」を酒の肴にした。自分でホタテを捌いて食べる時は、貝柱を刺身にして、ヒモと肝は醤油で甘辛く煮込む。ホタテは無駄にするところはないというものだ。
ただ、そのヒモを刺身にして食べた記憶はない。珍しいものだと注文してみたが、コリコリとした食感とちょっと臭みのある変わった味だった。この量を取り出すには、いったいホタテを何個捌くことになるのかと考え込みながら、無事完食。推定でホタテ5個分くらいの量ではないか。わさびも良いが、生姜もあいそうな気がする。

本命はホタテフライで、おそらく刺身にするレベルのホタテをフライにしているのだろう。ただただうまい。ウスターソースがついてくるが、ちょっと浮気をして醤油をかけるのも良い。タルタルソースなどという気取ったものはいらない。ソースなしでホタテだけでも十分うまい。
しかし、ホタテの名産地北海道では、このホタテフライを提供する店が「壊滅的に少ない」のが悲しむべき現状だ。観光客向けの店では貝殻で焼いたバター醤油焼きがのさばっている。あとは刺身で出してホタテ料理はおしまい的な感じだ。北海道では料理の進化を拒否しているとしか思えないと、いつも憤慨しているのだ。
青森では郷土料理として有名なホタテ料理がいくつかあるが、それにあぐらをかいて進化を止めているとはいえない。(ヒモの刺身もあるしね)

そして、ホタテ料理の拡大版として、ホタテラーメンがある。ローカルな汁物「けの汁」を応用したラーメンを押し除けホタテラーメンが一番上に乗っている。なんと、青森名物煮干しラーメンは一番下に掲載なのだから、ホタテファーストな気配は濃厚だ。一時期、青森の帆立養殖は貝毒の発生で壊滅的になったが、ようやく復興したようでめでたい限りだ。
青森駅前の大衆食堂、定食屋で、青森名物を堪能できる。名酒豊盃をちびりとやりながら食べる帆立料理で、青森駅前は大満足できるラブリースポットだ。青森うましだなあ。