お正月に思うことを少々

英語は中学高校と得意な学科ではなかった。それでも毎年4月になれば某国営放送のラジオ英語会話を聞いていた。いつも9月になると諦めてしまうので、毎年半年だけ参加する渡鳥イベントだった。
英語の授業では、英文法が苦手で、単語の記憶力も悪買った。ずっと苦手意識がある学科だった。それが高校2年にリーダー(英文読解)の先生に感銘を受け、いきなり原書を無理やり読む習慣がついた。
ちなみにこの先生の最初の授業で聞いたのが、英語ではなく中島敦の山月記で、まるまる朗読してくれた。英語の先生から、現代国語の授業を受けたのだから、それはびっくり体験だ。
多分、その尊敬する先生が原書で読む楽しさみたいな話をしたのだと思う。それにまんまと乗せられたわけだ。最初は中学生程度の英語で書き直されていたトムソーヤーの冒険、ハックルベリーフィンの冒険を読んだ。なぜか完読できたので、調子に乗って英文SFに手を染めた。新聞の英語は難しくて最初から諦めた。
その後、大学に行っているころは、翻訳が出ていないSFを中古のペーパーバックで何冊か読んだ。読んだといっても話の筋を追うのがせいぜいで、理解度は半分程度だったと思う。
その後アメリカ暮らしを一年ほどした時に、日本から持っていた本を読み切り、読むものがなくなり仕方なしに英語の中古本(ペーパーバック)を大量に読み漁った。活字中毒というのは恐ろしいものだと思い知った。活字であれば日本語でなくてもなんとかなる。そんな時期に覚えた格言というか箴言で、人生の役に立った言葉がいくつかある。
TANSTAAFL
There ain’t no such thing as a free lunchの略で、ハインライン作「月は無慈悲な夜の女王」に出てくる言葉だ。この本は我が人生ベスト中のベストSF作品だと思っているが、主人公たちの行動規範になる言葉でもあり、ハインライン哲学の根幹にあるものだろう。
意味は「無料の昼食はありません」というもので、語源はアメリカの飲み屋で酒を頼むと無料でランチが食べ放題だったことに由来する。タダのランチを提供する飲み屋は、酒が高いことが多いので、結局、高い酒代に食べ物代が含まれている。つまり、タダのランチなんてないのだよ、ということらしい。初めてこの言葉を知って以来、何かあると意識の底から響いてくる。タンスターフル、タダのランチはありませんと。
もう一つが、軍事SF 「孤児たちの軍隊」の中で見つけた言葉だ。
“The difficult we do immediately. The impossible takes a little longer.”
/Combat engineers thought alike
「困難」だったら、すぐにやって見せます。「不可能」だったら、もう少し時間がかかります。 ・・・訳者注 アメリカ陸軍工兵隊のスローガンの一部
というものだ。これはサラリーマンをやっているときに見つけたもので、面倒くさい仕事に巻き込まれた時は、ちらっと思い出していた。この言葉を実践するのは難しいんだよなあとぶつぶつ言いながら、やはりお仕事とはこうあらねばと自分を奮い立たせるためだ。我ながら感心するが、真面目に仕事をしていたのだなあ。
少なくともあまり読んだことのない仏典やキリスト教の新約聖書などよりSFの諸作が、よほど人生に影響を与えれくれているのは間違いない。今日も昼飯にはちゃんと代金を支払ってきたしね。
ご参考まで 月は無慈悲な夜の女王
https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11748.html
孤児たちの軍隊 (言葉が出てくるのは4巻)
https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11923.html