
銀座一丁目のあたりには、各県のアンテナショップが集中している。有楽町の交通会館はまさにアンテナショップ密集地帯だが、銀座一丁目も相当な数だ。沖縄、高知、石川、山形、茨城、そして広島だ。
店構えもそれぞれに特徴があるが、意外感のあるのはこの広島県アンテナショップで、ぱっと見は高級雑貨店のような雰囲気がある。見た目が、ひろしま、ひろしましていない。(広島のイメージが思い浮かばないというのもあるのか)沖縄ショップは表に大きいシーサーがお出迎えしてくれる。高知ショップは坂本龍馬が見張りをしている(歓迎しているのかもしれない)。広島は、何がお出迎えしてくれると、しっくりくるのだろう。牡蠣・もみじ饅頭のゆるキャラではないだろうなあ。

広島といえばまず連想するのがお好み焼きで、その次が牡蠣、3番目が厳島神社という感じだろうか。だから、「レモン推し」されるとちょっと不思議な感じがする。
確かに瀬戸内の島でレモンを作っているのは知っていたが、広島県という意識がなかった。なんだか、瀬戸内海の島は全部、香川と岡山みたいな思い込みがあるせいだ。

その広島県名物で最近よく耳にする「つけ辛麺」を食べようと意気込んで広島県アンテナショップに乗り込んでみたら、なんともう一つの広島名物「汁なし坦々麺」に変わっていた。
どうやら調べたネットの情報が古かったらしい。当てが外れてしまい、まっすぐかえろうとおもったが、せっかくここまできたのだからと思い直して汁なし坦々麺に挑戦することにした。
最近ではあちこちで坦々麺屋を見かける。当然、ほとんどの店で汁なし坦々麺も食べることができる。すでに汁なし坦々麺は広島を飛び出し全国区商品になっているようだ。
ただ、広島名物汁なし坦々麺に限らず、油そば、汁なしそばの類をちょっと苦手としている。個人的な偏見だが、あまり旨いと思ったことがない。たぶん、濃い目の辛いタレと麺のバランスが好みではないのだろうと自己分析している。もっと、汁だくにしてくれればなあと、油そばを食べながら、いつも思っている。

いささかためらいながら、いざ食べることに決めて注文しようとしたら、なんと選択肢はほとんどない。基本は辛さを選ぶ、麺の量を選ぶだけ。お店の方から、おすすめのランチセット、温玉と小ライス付きを勧められ、なんとなくそれにしてしまった。席について2分ほどで注文した品物が出来上がった。早いのはありがたい。その二分間待っているうちに満席どころか外に行列ができていた。人気店なのだ。

座った席の真前に、「正しい食べかたマニュアル」があった。おすすめの通り、お作法に従って混ぜ混ぜして、追加で山椒をかけ、温玉につけながら食べた。山椒の痺れ感がたまらない。ただ、やはり味が薄い気がする。また、氷入りのお水は最重要な脇役だということに気がついた。大量に水消費する食べ物だった。カレーを食べるときより大量に水を飲んだ気がする。

麺を完食した後、マニュアル通りに米を丼に投入し、後掛けのたれと酢を垂らした。鷹の爪も放り込んだ。ただ、間違って量が多すぎたが、取り出すこともできないので、一気に撹拌した。見た目は非常に悪い。料理として出されたら脱力しそうだが、セルフ混ぜなので気にしない。

正直にいうと、この混ぜ飯が抜群にうまい。麺よりもこちらが気に入ってしまった。できれば、TKGに続く第二の混ぜ飯コンセプトとして独立して欲しいくらいだ。小さい茶碗に入った白飯、味付き飯などが5種類くらいあり、トッピングで鶏そぼろ、オカカに鰹フレーク、海苔に錦糸卵が良さそうだ。後は薬味に、ネギ、山椒、生姜等々がついていて、タレが甘い醤油、出汁醤油、味噌タレ、にんにくタレみたいなラインナップにする。大きめのどんぶりでかき混ぜては食べていくと、段々に色々な味が混合されていって・・・。と、業界初のまぜまぜご飯屋のコンセプト開発をしてしまった。
おそらく広島式汁なし坦々麺は、2度3度と食べて味に慣れていけば好物になるのだろう。大阪発のラーメンも慣れるまでに時間がかかった。慣れるには時間と回数が必要な食べ物は多い。何度食べても慣れない博多のうどんみたいなものもあるが。
食の多様性は重要だ、食のダイバーシティーだなと、満腹感に満たされながら銀座で広島を楽しんだ。