
最近のBookOffは、古本屋というより「中古品多角販売店」と言った方が良いようだ。ビデオゲームやCD、家電製品から、中古衣料まで手を広めている。自宅周辺のブックオフも半分くらい閉店したが、生き残っているところは売り場の半分が本以外になっている。だから、鞄が売っていても別に驚くほどのことではない。
しかし、東京屈指のおしゃれ人気街、自由が丘の駅前でブックオフに入ったら、目が点になるどころか、腰が抜けそうなものを見つけてしまった。
何気なく値札を見たら、なんだかゼロがいっぱい並んでいる。3度見直した。ゼロの数を数え直した。やはり間違いない。七桁の数字だった。値札の上に細かく書いてある商品名を見て納得した。ただ、同時に納得できないこともあった。
納得したのは商品名で、エルメスのパーキンといえば、高級鞄の代名詞で何年も予約待ちが入っているくらいは、ブランド物に疎い自分でも知識として知っている。だが、現物をマジマジと見たのは初めてだった。かばんの実物を見ても、パーキンだとはわからない無知ぶりなので仕方がない。
それでもうろ覚えの知識で、つけてある値段が新品の半額以下らしいということはわかった。低下の半額で売っているとすればブックオフ的な正統な値付けなのだろう。しかし、ブックオフの値札はシールでぺたんと貼る簡易的なものだ。流石にエルメスの鞄にシール貼りは難しかったのだろう。
納得のいかなかったことは、ブックオフでエルメス製品を買う人ってどんな人だということだ。そして、もし買うとして、一体どうやって支払うのかということだ。この金額を支払うとすると、大多数のクレジットカードは上限に近いか、上限超えだろうし・・。まさか、キャッシュで札束?などと考えてしまった。「すいません、これください」と言って、バッグの中から帯のついた1万円札の束を取り出す光景は、想像するだけで寒気がする。とすると、上限なしで有名なブラックのカードを使用する人種しか買えないのか?ただ、そういうハイソな人種は、ブックオフで買い物はしないような気がする。エルメス直営店に行くのではなかろうか。何やら階層社会の消費行動と高額消費経済に関して哲学的なことを考えさせられてしまった。これはまさにブックオフの珍商品(個人的に)を見つけてしまった気がする。
すごいぞ、自由が丘。

と思って、隣を見たら、もっとお高いバッグがぶら下がっていた。途端にあれこれがすごく気になり、ショーケースの中を片っぱしから見てみたが、流石に七桁商品はこの二つだけで、あとは10万円から30万円前後の商品が並んでいた。それでホッとしたのだが、「よく考えればブックオフで30万円の商品って、あり得ないでしょう」感は拭えない。その後で気が付いたが、店内照明は、いつも行っている蛍光灯で明るいブックオフではなく、間接照明を使ったブティックみたいな売り場だった。やはり、すごいな自由が丘・・と、何故か敗北感を感じながら店を出た。

ブックオフの真向かいの店が、何やら懐かしいブランドだった。カリフォルニアではローカルNo.1的なハンバーガー屋で、何年か前に大々的に宣伝をして日本上陸をしたハンバーガー店だった。確か自由が丘は2号店だったようなき記憶がある。アメリカンサイズのハンバーガーはボリュームタップリで、肉肉しいのが特徴だ。1号店があいた時には秋葉原までわざわざ食べに行った。その後、店舗をどう拡大していたのかほとんど覚えていない。だから、昔馴染みに出会ったような懐かしさを感じた。

ただ、店頭のメニュ看板を見て、また腰が抜けそうになった。確かに、ここのハンバーガーはうまい。カリフォルニアに仕事で行った時はずいぶんお世話になった。たが、こんな値段だったか?と思わず見直してしまった。
自由が丘で2度目の価格疑惑事件だ。おまけに、バーガーの価格は単品価格のようだから、セットにすると1000円札でお釣りがもらえない。昼時で腹ペコだったらふらっと入ってしまうくらいの魅力はあるが、晩飯前に食べてしまうと、夜はめし抜きになるくらいのボリュームでもあるし。このん値段を払うとなると、ちょっと考え込んでしまう。確かに、この店が日本で生き残れとしたら、東京山手のハイソな街でなければならないだろうなという気もする。
結局、自由が丘で起こった個人的な事件で、東京都民と埼玉県民の民度というか価格意識というか、色々な社会的背景に想いを馳せたのであります。自由が丘で感じたのは、まさしく非・東京都民的「エレジー」でありました。