
ネットニュースのコラムか何かで見たのが、蒲田にある弁当屋の話だ。「鳥久」という弁当屋がテレビ局のロケ弁でNo.1の人気商品だという。へえと思った。ロケ弁はもっと高級そうな料亭製造みたいなものだとずっと思っていた。
蒲田に行くことはまずない。おそらく、これまで蒲田の駅で降りたのは人生全部合わせて3回くらいだろう。だから、その時の目的地を全て思い出せるくらいの「行くのは稀れ」な場所だった。
いつか機会があればと思っていたが、やはりというか当たり前というか、もう何年も経ってしまった。これはいけないぞと、あえて弁当を買いに蒲田へ出かけることにした。
ところが、あまり考えもしなかったので、残念ながら蒲田に着いたのが午後2時過ぎで、ほとんどの弁当が売り切れていた。やはり弁当屋は昼前に行かなければいけないなと反省した。それでも、お目当ての特製弁当はなんとか手に入れることができた。

鳥の串焼き、鳥の唐揚げ、肉団子など鳥料理が入っている。白飯の真ん中には梅干しが一つ。ああ、実にこれが日本の伝統芸だ、と思った。おかずとご飯のバランスが微妙だが、最近の弁当はご飯少なめ、おかず多めが主流だろう。それと比べると、この特製弁当はちょっとご飯多めに仕上がっている。「特製弁当」が人気の理由がここにある。崎陽軒のシウマイ弁当と共通点がある。つまり、伝統的弁当は、米を食べるためにおかずがある。そこがポイントだ。

店頭に並ぶ様々なお弁当が、基本的には鳥のおかずの弁当だった。昼過ぎにもかかわらず店頭に車を止めて買いに来る客が絶えない。一番人気は唐揚げ弁当のようだが、大振りの唐揚げは家庭では調理しにくいから、人気の秘密はその辺りにもありそうだ。また食べてみたい名物弁当だった。ようやく念願が叶い、人生の積み残したお荷物を一つ片付けた気分になった。やはり、蒲田は遠かったが、空港に行く途中でよれば良いのだと、家に戻ってきてから気がついた。間抜けな結末でありました。