回転寿司御三家を中心に、回転寿司の勝ち組は100円均一だったはずだ。皿ごとに値段が違う店は、すっかり流行の外側に取り残された感がある。出店数も激減していた。別にコロナの影響ではなく、回転寿司業界で広く受け入れられた業態、つまり勝ち組としてワンプライスが標準となったはずだった。ところが、コロナの嵐の中で、100円均一業態の大手チェーンが、次々と価格の多様化、値上げをして、もはや均一価格とはいえない状態になった。
そうなると、元々から高品質高価格の回転寿司が受け入れられていた北海道や北陸ではもはや勝負にならないのではないかと思う。そして、均一価格がメインを占める関東、東海、関西とつながる人口集中帯でも変動が起きそうだ。100円ではない方の回転寿司が盛り返すような気がしている。

埼玉ローカルのガッテン寿司が、回転寿司としてはちょっと変わった店を出しているが、そこに行ってみて思ったことだ。価格帯は200−600円台と幅広い。100円均一チェーンからすると相当に高く見える。ただ、酒のつまみの種類が多い。酒の種類も多い。駅ビルの中という立地もあるのだろうが、寿司居酒屋を狙っているような感じがする。しかし、注文はタッチパネルだ。開店レーンは回っているし、そこに鮨は乗っている。ただし、基本的にはバイオーダーで、握りたてを提供する立ちの鮨屋感がある。確かに、回転レーンの中で職人が握っているからライブ感は100円均一店とは異なる。

蟹甲羅に入った蟹味噌の焼き物は、100円均一店では味わえない「酒の肴」だった。こういうメニューを導入する時点で、100円皿をさっさと注文して、さっさと帰ってもらう高回転型ビジネスではないということがわかる。のんびり食べて、高額商品を頼んでもらうスタイルを選んだということだ。

季節のメニューではアワビの刺身など、高価格帯の限定商品を導入している。回転寿司で刺身を注文することはほとんどないと思う。スシをたらふく食う客と刺身を楽しむ客は、あきらかに客層が違う。ニーズが違う。刺身の盛り付けだけで判断すると、立ちの鮨屋との違いははっきりしているが、大事なことは回転寿司で高価格帯商品のバラエティーを増やすという挑戦をしていることだ。ちなみに、このアワビ刺しは700円だった。微妙な値付けだと感心した。
光物の3点セット イカの3点セット
お得感を出すのは、3貫盛りの皿で、光物3貫の皿とイカの部位違い3貫の皿を注文してみた。個人的にイカ、タコなどの軟体動物好きなので、イカとゲソの組み合わせが嬉しい。できれば、イカ、タコ、ホタテでセット組をしてもらいた。光物3点セットも救いの女神といいたい組み合わせだった。アジとサバとコハダが食べたいと思っても、合計で3皿6貫というのちょっときつい。回転寿司の定番が2貫付で、店の効率向上策としては理解できるが腹の膨れ具合で言えば厳しいという客が多いはずだ。最近某回転寿司チェーンでは一貫付を期間限定で始めたらしい。回転寿司のマーケティングがネタ競争から、客のニーズを細かく拾うようになった変化の表れだろう。ネタの高級化と価格上昇だけではマーケティング戦略として先がない。
塩辛軍艦 とび子軍艦
巻ものでは低価格帯も揃えている。今や回転寿司で巻物の主流といえば、ウニとかいくらといった高価格帯ではなく、サラダ巻き、コーン巻きのようなスシの異種、亜種といったものだ。それをスシとして異端だとか邪道だというつもりは全くない。海苔巻きの体裁を取りながら濃い味付けの具材をトッピングとして使うというのは軍艦巻きの鉄則だろう。それが海産物ではなく、マヨネーズ味や肉系に変わったということだ。
そのためか100円均一店ではあまりお目にかからない塩辛巻き、とび子巻きが存在していたのは嬉しかった。この手のトッピングはすでに死に行く運命の食材なのだろうが、おじさん相手の寿司居酒屋を目指す時には、まだまだ使い道があるということだ。
ロードサイド型の店では、このような居酒屋対応が難しいとは思う。しかし、アフターコロナで駅前繁華街が陥没し、回転寿司の大型店舗の出店が続いている。生き残りをかけた駅前バトルでは、こうした客層をちょっと変化させた業態、コンセプトが有効なはずだ。
くら寿司やスシローが、昼夜の提供メニューを変化させ自家性二毛作店に転換するような気がする。ファストフードの覇者、マクドナルドの夜マック戦略を回転寿司チェーンが換骨奪胎できるか。楽しみだなあ。
今日はちょっと真面目な業界話でありました。