埼玉県西部にあるお茶どころに住んでいる。周辺の市とあわせると人口は50万人くらいになり、そこそこの規模の都市圏といえる。それでも車で5分くらい走ると周りは茶畑と芋畑で、その中にマダラに住宅地が点在する首都圏の典型的地方都市だ。
人口だけ見ると大抵の県庁所在地より大きいのだが、やはり東京のおこぼれ都市というかベッドタウンというか、中途半端な賑やかさがある。おへそが無い町とでもいうべきなのか、繁華街の規模は小さい。そもそも市役所が街の中心部から移転したので、街中に肝になるオフィスがない。普通は県庁所在地であれば、県庁と市役所が並び立っていて、その周りに飲食店、飲み屋などが固まっているのが特徴だ。それが無い。不思議な街というのは、人口に応じた繁華街が存在しないという意味だ。
そして駅前ではなく、畑の真ん中にラーメン屋が立っていて繁盛している。これもまた不思議なものだと思う。この茶畑の中に立つお気に入りのラーメンだが、化学調味料を使わない、いわゆる無化調のラーメン屋だ。そのためなのなか、いつでも駐車場がいっぱいになっている。流石にコロナの間は少し暇そうだったが、久しぶりに平日昼前に行った時はすでに駐車場が満車だった。

この店のイチオシはつけ麺なのだが、中華そばが好みなので10回行くと9回は中華そばになる。今回はひさしぶりということもあり、珍しくつけ麺にした。濃厚系のスープがたっぷりなのが嬉しい。つけ麺推しの店でもスープが少ない店は嫌いだ。スープが冷たくなりやすいし、味も薄まるからだ。つけ麺スープはたっぷりにしてほしい。
この店は食べ終わった後に困るほどスープがたっぷり。良い店だと思う。麺も太めの麺で、量もたっぷり。完食するのが辛いと思うほどの量だが、それでも大盛りにする猛者がいる。どういう胃袋をしているのだろうと、他人事ながら心配になるほどだ。めんまや焼豚角切りはスープの中に沈んでいるので見えないが、これも量はたっぷりだ。
個人的好みで言えば、海苔がおまけ程度なので足りないぞと言いたい。次回は忘れずに海苔トッピングを追加しよう。いつもの通り、実に満足して店を出た。うちの近所ではこの店が一番だと、行くたびに思うのだが、やはりちょっと遠いから行く機会が少なくなってしまった。ラーメンを食べにわざわざ車で移動というのは、ちょっと抵抗感がある程度には都市住人なのだ。

車の移動が面倒だと感じる時には、感覚的にはもうちょっと距離が近いところで店を探したい。そんな時のお気に入りは「山田太郎」という山田うどんが運営する新業態のラーメン屋だ。ただ、ラーメン屋とは言わずに埼玉タンメンと言っている。埼玉タンメンというのは、おそらく山田うどんという会社の造語で、埼玉人にとっても一般名詞ではない少なくとも個人的には聞いたことがない言葉だ。
だから、これが埼玉タンメンかあ、というしかない。ただ、素直に食べた感想を言えば、長崎ちゃんぽんに限りなく近い。パクリというと語感が悪いので、完コピと言えば良いか(笑)。料理の進化はコピー作業とその改良なので、そのうち埼玉タンメンが爆発的に開花する可能性がある。長崎ちゃんぽんを超えて、歴史的名物になるかもしれない。埼玉県人のソウルフードに進化するまで、暖かい目で見守りたい。
その埼玉独自のラーメン店で、辛味噌タンメンがお気に入りとなった。個人的なラーメンランキングではtop10くらいには入る。ただし、辛味噌と言いながら辛さはマイルド級なので、辛いもの好きであれば物足りないか、追い辛子が必要だろう。もう少し辛さを攻めても良い気がするが。

残念ながら、近くの駅前にはラーメンの名店はない。それでも町中華で楽しむことはできる。餃子でビール的な居酒屋利用も可能で、レバニラ炒め定食にビールというオヤジ族はよく見かける。だから、うまいラーメンを食べるときは車で15分みたいなことになるのだが、これも地方都市に住むことの楽しみと面倒くささだと割り切ることにしている。
こうしてみると東京都内、山手線沿線というのは実に便利な場所だったのだなと、あらためて思う。徒歩5分圏内に10軒はうまいラーメン屋があった、恵比寿という街がちょっとだけ懐かしい。一度は、憧れの街ランキングの上位タウンに住んでみたかったなあ。