
この店は札幌ススキノの外れにある。長い行列のできるラーメン店の一つだ。ススキノのハズレという場所柄のせいか、外国人観光客も多かったようだ。店の前を通りがかるたびに長い行列を見て、今日も入れないなあなどと思っていた。ところがこの一年、すっかり行列が無くなってしまいふらりと昼前に立ち寄るとすんなり入れた。待ち時間ゼロというのはすごいことだ。
ただ、ラーメンを食べ終わり帰る時にはすっかり行列ができていたので、たまたまのタイミングだったのだろう。この店のうまいやつは間違いなく味噌ラーメンだと思うが、他の客の注文を聞いていると意外とばらけていた。メニュー名は昔の国の名前なので「信州ひとつ」とか「越後に餃子つけて」みたいな感じの不思議な会話が飛びかっている。チャーハンが裏名物らしく、ラーメン+チャーハンという豪快な組み合わせを頼む客も多い。強靭な胃袋の持ち主だ。

いわゆる豚骨味噌ラーメンの系統で、今ではすっかり当たり前になってるが、初めて食べた時はかなり斬新なラーメンだと思った。最近はすっかり見かけなくなった月形の睦屋みたいな感じだと思う。見た目は平面的というか簡素なルックスだが、麺と濃いめのスープはなかなかバランスが良い。もはや老舗の風格だろう。抑えきれぬ満腹感が、うまさの証明だった。いつもチャーハンを食べたいなと思うのだが、永遠に無理かもしれない。

こちらの店は千歳の外れにあるカレーラーメンの象徴的な店で、国道沿いに立つ原野のど真ん中にある一軒家的佇まいだ。店の作りや駐車場の広さを考えると営業系サラリーマンとかトラックドライバーなどを相手にした店なのだと思う。
ただ、この店も一時期はインバウンド客があふれ混雑度がマックスになり入りずらい時期もあった。そのピーク時の後、店内が改装されセルフサービスの店に変わった。回転数を上げるための工夫なのだろうが、個人的にはサービス度が下がったなと思っていた。ところが、コロナ拡大期にはこの仕掛けがうまく作用したようだ。客と従業員の接触が最低限になる「たいへんよくできました」的なオペレーションになった。昼時に行ったのだが、待ち時間ができる繁盛ぶりだった。

カレーラーメンは、とろみのあるねっとりとしたスープで、食べ進むうちに額に汗が出てくる。さほど辛いとも思わないがスパイスが効いているので発汗するということか。ただ、舌は正直で水を何度も飲むハメにはなる。全体的な味は日本蕎麦屋のカレー南蛮に近い「カレー感」だと思う。麺が表だって主張してこないのはスープの強さのせいだろう。旨辛という表現が似合っている。最近のタラーメン屋の旨辛味は赤い唐辛子をベースにしたものだが、こちらはカレーベースなのでまた別の「旨さ+辛さ」だ。
スープカレーの原点はラーメンスープだったという話を聞いたことがある。確かにこのカレーラーメンを麺抜きにして、揚げ野菜を放り込んだら、美味しいスープカレーが出来上がるだろう。
ただ、それを肴にビールを一杯という気分にはなりそうもない。スープカレーはやはり孤高の食べ物で、酒をお供にはしないような気がするからだ。
普段だと、まずは餃子にビールで締めにラーメンというパターンを好んでいるが、このカレーラーメンはこれ以外は何もいらないぞという主張の強さがある。ビールなぞ論外というストイック感がある。スープまで完食した後、吹き出る汗を拭いながら「うまかったあ」と店を出るのが、このラーメンの正しい楽しみ方のような気がする。
気分はほとんどゴローさんだな。