
ビルの建て替えで移転した札幌の町中華は、値段が昭和のまま止まっているようなところがあり、これでやっていけるのかなと心配になるくらいだ。味も値段以上で、ごく普通の中華料理をごく普通の美味さで提供するという、町中華の鏡のようなお店だ。こういう店には、昼のピークを避けちょっと遅めのランチ時に軽くいっぱいやるのが良いと思っている。
ちなみにこの店の近くには古くから続く有名中華料理店もある。その店も例の後遠く一時期は外国人観光客に占拠されてしまった感があったが、今ではちょうど良い混み具合になった。ただし、週末は場外馬券を買いに来る競馬ファンに占拠されることで有名で、この日も店外に人が溢れていた。そのためか、近くにあるこの店にもランチタイムが終わっても客が途切れることなく入ってきた。おこぼれ効果なのかとも思ったが、遅いランチに来た客のほとんどが子供連れのファミリーだったので、やはり味と価格の評価が高いということのようだ。
しかし、ネットで馬券が買える時代に場外馬券場に人が集まるというのは、競馬ファンの中に「群れ集う」習性があるのだろうか。赤ペンと予想専門誌を手放さないので競馬ファンはどの店に行ってもすぐにわかる。だからこそ類は友を呼ぶということなのかもしれない。

いつもは酢豚とビールがちょい飲みの定番だが、禁酒法の完全解禁日だったので、イカと豚肉のXO醬炒めという、この店で一番の高級品を頼んでみた。酒も紹興酒をグラスで頼んだ。しみじみうまいなあと思った。ささやかな大衆的楽しみというか普段の日常のひと時というか、変な規制がないのはありがたいことだとしみじみ思った。
禁酒解禁日翌日の週末だから、もっと酔っ払いが街に溢れているかとかまえていたが、この店でもビールを頼む人がたまにいたくらいで、酔っ払いのどんちゃん騒ぎなどかけらもない。街中にも高齢者の姿は少ないので、まだ色々と普通の生活には戻っていないのかもしれないなと感じた。それでも夫婦と思しき高齢者カップルの姿もちらほら見かけたから、業種によって回復度合いは違うだろうが、年が明けたくらいには元に戻るのか。居酒屋などの酒中心業態が回復するのは一番最後なのかもしれない。とりあえず、町中華が元気になって欲しいものだ。