食べ物レポート

濃厚な美味さの北海道スイーツ

昔、まだ会社で働いていた頃、お菓子の研究に北海道出張を申請したら、上司にバカにされた。なぜ北海道だと聞かれて、答える気にもならず適当な言い訳をした。どうやら洋菓子といえばおフランスという短絡的思考回路らしく、フランスで修行したパティシエは東京にしかいないと思い込んでいた節がある。日本の洋菓子の集積地として確かに東京は大きい市場だが、洋菓子は明治以降の開港地から広まったため、全国の港町など名人が多くいた。
そして、洋菓子の原材料である牛乳、バター、生クリーム、砂糖などは北海道が主産地で、当然ながら北海道には良い原材料をふんだんに使った菓子製造の拠点が出来上がっている。特に十勝は小豆と砂糖が揃っているので和菓子の拠点にもなっている。というようなことを外食産業で働いている人間にわざわざ説明しなければわからないのかと思うと、あまりに面倒くさく、とてつもなく馬鹿らしくなり、内心では自分で勉強しなさいよと思いながら適当に誤魔化した。会社組織で知識の共有は必要だが、それも人間関係によるのだ。

その十勝帯広から生まれた六花亭の隠れた名品が、このクレームブリュレだと思う。お値段160円だが、価格が3倍でも支払うべき傑作スイーツだ。買ってから時間が経ってしまい、トップに乗っているキャラメラーゼしたカリカリの砂糖が溶けてしまったので見栄えが減じている。お店で販売しているものは、表面がガラス状に輝いていて美しい。クレームブリュレは、乱暴な言い方をすれば濃厚味の生クリームプリンだ。東京の洋菓子店でもほとんど見かけないのは、原材料費が高くなりすぎること、つまり牛乳がわりにタップリと生クリームを使うのがうまさの秘訣だからだろう。おまけに、表面で焼き上げてキャラメラーゼした砂糖のパリパリとした食感が、旨さの秘訣になるが、時間がったつと溶けてしまうという致命的な欠点があるからだ。テイクアウト向きの商品ではないし、時間経過に弱いという特性のせいだ。その難物スイーツ、クレームブリュレがプリンと同じ価格で売られている。六花亭はマルセイバターサンドというキラーコンテンツを持つ製菓屋さんだが、和洋合わせた広いラインナップで北海道スイーツメーカーのトップ集団に入っている。

残念なことに買ってきて半日もしないうちに表面がこういう状態になってしまう。おいしくいただく賞味期間は、買ってから1時間くらいではないか。それでも、砂糖が溶けた状態であれ中の味は変わりがない。濃厚で、ねっとりとした舌触りさえあるプリンのようなもの、としか言いようがないがプリンとは旨味が違う。そもそも都内の大半の菓子屋でプリンと言って売られているものは、全てとは言わないが大部分が水羊羹的というか寒天っぽいというか、ゼラチンの使い方が下手すぎる。
プリンでそのレベルなのだから、クレーム・ド・ブリュレなど、そもそも販売しないのも無理はない。北海道といえば海産物とラーメンの話しか出てこないのだが、実は菓子は相当レベルが高いので、北海道旅行を考える方は是非スイーツツアーを検討して欲しいものだ。

個人的にはこの六花亭を筆頭に、柳月の三方六、千秋庵の山親父、ロイズの生チョコ各種あたりが初心者コースで、上級者になると札幌のロマン亭、ショコラティエマサール、ステラマリス、パイクイーンなどをめぐって欲しい。旭川の壺屋、帯広のクランベリーもわざわざ行く価値のあるお店だ。日本全国、地域ごとに有名な菓子店は存在する。東京でもカタカナ書きの有名店は数多くある。ただ、地元の食材、国産の食材を使うという点でいけば北海道に対抗できる場所はないだろうと思うので、是非お試しいただきたい。決して地元愛に溢れた発言ではないので、そこはご理解賜りたい。(エヘンエヘン)

ちなみに全国47都道府県全制覇している過剰旅行者としては、沖縄のジミーズのホールケーキ、広島のバッケン・モーツアルトのザッハトルテ、太宰府の梅ヶ枝餅、小樽の館ブランシェのショートケーキなど愛してやまない名店は全国あちこちにありますよ。

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