
コンビニ弁当の改変の激しさはまさに群雄割拠というか戦国時代というか、一年前に発売された弁当はだいたい消滅する運命にあるようだ。ホカ弁界ののり弁や唐揚げ弁当のような絶対定番は存在しないのだろう。その時々の旬の食材を使った季節弁当は、コンビニ弁当ベヒーユーザーには貴重な変化なのだとは思うが、コンビニ〇〇〇〇の絶対定番みたいなものは記憶にない。思い出せる定番弁当に近い最古のものはセブンイレブンのイカフライおかか弁当だけで、それも今は販売されていないようだ。
ところが、このチャーシュー弁当はコンビニ弁当にもかかわらず改良された二代目で、何やら長生きして定番になりそうな気配がある。チャーシューを使った名物料理といえば、愛媛県今治の焼豚卵飯だが、この弁当はそれにインスパイアされたものだろうか。インスパイアと書けばカッコ良いが、要は改良コピーということで、料理の進化はこの改良コピーの連続で元々の料理とは全く異なっていくものだ。オリジナルと改良コピーのせめぎ合いが料理の進化になる。なのでコピー=パクリという悪者認識はない。コピーから生まれる新しさこそがおいしい料理の基本だと思っている。
特に、完成度の高いうまいものは、コピーするのでさえ大変なものだ。個人的な経験で言えば、福岡にあるパスタの名店の看板メニューをコピーしようと1年間も悪戦苦闘した記憶がある。結局、コピーすらできなかった。できたのは似て非なる劣化コピーだけだった。

ご飯の上に乗っている厚めのチャーシュー四枚プラスゆで卵の半分と紅生姜。すっきりとしている。駅弁の名作、山形の牛肉どまんなかも、こうしたシンプルなルックスだが、うまいものは変化球ではなく豪速球でよいう典型だ。このチャーシュー弁当も、それに倣った豪速球系だった。
弁当と銘打っているが、実はこの弁当箱は丼のように中央部分が窪んでいるので、白飯がチャーシューの下にびっしりと敷き詰められているわけではない。浅目のどんぶりのような格好になっている。そこがチャーシューの肉感とご飯のバランスを支えている工夫だろう。甘めのタレとチャーシューとご飯を一気に頬張ると、肉肉しい幸せが味わえる。
北海道の豚丼も丼の上にはみ出す豚肉が食い気をそそるが、このチャーシュー弁当もその辺りのルックス、見栄えの計算がなされているようだ。
一般の飲食店がテイクアウトに手を広げざるを得ず、この先しばらくは弁当を中心としたテイクアウト市場が活気を示すのだろうから、弁当大手のコンビニとしても工夫をこらして対抗するしかない。しばらくコンビニ弁当が面白そうだ。