
この店で初めてラーメンを食べたのは10年以上前のことだ。当時、何度目かのラーメンブームが起きていて、コミック「美味しんぼう」に触発されたグルメ漫画がラーメンを大きく取り上げていた頃だったと思う。ご当地らーめんが爆発的に広められ、札幌ラーメンのようなチェーン店化されてシステムが広がっていった。その一方で次々と新ご当地ラーメンの後継者が出没していた。
会津喜多方ラーメンが走りで、京都ラーメン、尾道ラーメンなどなど百花繚乱だった。そこに九州系豚骨ラーメンが暴力的に殴り込んできて、日本中あっという間にとんこつブームになった。そんなご当地ラーメンブームの中、なぜかほとんど取り上げられなかったのが信州ラーメンで、確かに信州といえばそば王国だしな、という思い込みが強かったのだろう。その信州松本で行列のできるラーメン屋としてぶいぶいと言っていたのが(個人的な感想です)この店だった。そのときの食べた記憶は濃厚な味噌ラーメンだなあというもので、信州味噌を使うとこんなアレンジになるのかという程度だった。

お蔵を改造したと思しき店内は意外と狭く厨房とカウンターでできている。入り口にある自動販売機で食券を買う。席につく。ラーメンが出てくるのを待つ。というシンプルの極みな動線だ。夜の8時過ぎで店内には誰もいない。超がつく繁盛店でもこんな感じになってしまうのか、と寂しい気分になってしまった。午後8時というまだまだ夜も浅い時間で店内独り占めだった。

券売機で人気NO1と書かれていたみそラーメンプレーン。追加トッピングもなし、味変もなし。シンプルの極みだが、まず初見のラーメン店ではプレーンを注文するものだと決めている。初見ではないが、味をすっかり忘れているので、ここはやはりプレーンが正解だろう。

明らかに見た目がコッテリ系のスープで、食べてみればコラーゲンでどろっとした濃厚な豚骨スープだった。それに負けない味噌の味の強さで、ああ、この味だったと思い出した。スープの強さに負けない味噌の強さとなれば、結果的に塩味が強くなる。そこに太めの麺を放り込むことで味のバランスをとっているが、これが10年以上前に完成していたというのがすごい。チャーシュー、メンマどちらも今風の高水準なもので、特にメンマは特筆ものだった。柔らかくて長めのメンマがたっぷり入り、太めの麺とのかみごたえ対比がたまらない。チャーシューもとろとろ系というよりふわふわ系の柔らかさだった。
いやあ、もしこれが10年前から変わっていないとすれば、当時はどれだけ先進的ならーめんだったのだろう。おそらく、毎年すこしずつ改良されているはずだから、10年前はちょっと違うものだった可能性が高いが。
「麺匠」を看板にするだけあって、素晴らしい一品だった。「らうめん」を名乗る店に外れなしの法則は正しいのかなあ。