
松本駅を降りて右手、東側に進むとホテルの一階に「つなぐ横丁」がある。全国あちこちにある屋台団地のようなもので、カウンター席が10くらい、テーブルが2−4卓という小ぶりな店が10軒くらい入っている。トイレは共用だが、多種多様な店が詰め込まれていて、横丁内ではしご酒も可能だ。焼き鳥屋でビールで乾杯、隣の餃子屋でハイボールを楽しみ、締めはタイ式焼きそばで、みたいな楽しみ方ができる。今やすっかり廃れてしまった、なんでも置いてある総合居酒屋みたいなものだが、専門店の集合体なので、やはり「味」に特徴があるこだわりの店として期待できる。

とりあえず横丁の中をぶらついてどんな店があるかを確認した。その後は、迷わず焼き鳥店に突入。最初に「中生」を注文したのだが、飲み屋で酒を頼むのも随分久しぶりだ。

この「やきとり番長」を目的に松本つなぐ横丁に来た。そもそもの話で言えば、札幌駅高架下にできた「つなぐ横丁」に飲みに行った時に、実は本店は松本の駅前にあるという話を聞いたからだ。おまけに「やきとり番長」という仙台にある居酒屋によく行っていたので、勝手に本店は仙台で、それが松本、札幌と広がってきたと思い込んでいた。実際には、仙台の焼き鳥番長は無関係らしい。

ここの焼き鳥は「うまい」と思う。世の中にうまい焼き鳥屋はたくさんある。札幌の「串鳥」はチェーン店でありながら、どの店もレベルが高い。焼き鳥屋といえば大衆店の典型みたいなものだが、個店では予約の取れない名人的な店もある。ただ、大衆料理の雄である焼き鳥屋で名人みたいのものはいらないなと思う。人気が出た焼き鳥屋が二店、三店と支店を広げるみたいなパターンが望ましいと、勝手に思い込んでいるが、この店はそのパターンらしい。
焼き鳥ダレが別添で提供される。カップに入ったものとスクーイズボトルに入ったものが出される。中身はどちらも同じなので使い方はお好みでと言われた。カップの方は串を持ってドボンとつける。スクイーズボトルは、マヨネーズやケチャップのように細長く絞りながら串の上にかけるスタイルのようだ。東松山の焼き鳥につく味噌ダレに似ている。こちらは味噌というより、ドロっとしたニンニクの効いたパンチのあるタレだが、個人的には絞ってかける方が量の調整ができて嬉しい。この追い掛けタレスタイルは全国の焼き鳥屋に広まって欲しいものだ。
【この稿続く