
くら寿司、スシロー、はま寿司が回転寿司界の三強だと思っているが、これにかっぱ寿司を加えて100円回転寿司の市場を考えると、中小チェーンを含め年商5000億円は超えるのだろう。回転寿司はもはやファミレスを超える外食産業の一大部門であることは間違いない。ちなみにマクドナルドとKFCとモスバーガーを合わせるとそれに近い規模になる。アフターコロナでは回転寿司とファストフードが勝ち組になったので、ますますこの二つのカテゴリーが強くなっていく。
個人的には、昔からアイデア全開のスシローが好みだが、くら寿司も時々自分たちが寿司屋であることを忘れたようなぶっ飛び商品を出すので観察対象として要注意だ。そうした大手回転寿司屋が夏の需要期のキャンペンを終え、9月から秋キャンを開始している。スシローは何と「ウニ推し」を始めたので週末明けの平日を選んで行ってみた。結果は、お目当てのウニが入荷待ちというか選択的販売に変わっていて、気分的にはちょとやられたなあ感なのだ。もっとはっきり言えば、騙されちまったぜという気分というか。
まあ、お目玉商品の売り切れごめんは仕方がない。それはいいのだ。ただ、関連商品の売り方が、ファミコンソフトの抱き合わせ販売(これもネタとしては古くなりすぎだが)みたいな気がする。抱き合わせ販売は公取の規制も入ったご法度手法なのだが、飲食業界的にはまだまだ変形抱き合わせ手法が生き残っているのだ。

写真手前にあるのがプレーンなウニのすしで、これが100円税別というのが今回のお目当て商品。だが入荷待ち、つまり販売していない。ところがタッチパネルをぽちぽち押してメニューを確かめていたら、ウニの上にトッピングが乗った3種盛りは売っている。ウニ一巻が100円だから、トッピング代が二巻分で180円ということか。そもそもウニ単品が売っていなのに・・・というモヤモヤ感が強い。
やれやれだな、と思いつつ食べてみた結果だが、やはりウニ単品が好みという個人的な結論になった。食い物屋がモヤモヤ感を提供してもねえ、と言いたい。ただ、100円でウニを食べるというのは原価割れどころか赤字商品だろうとも思うので、大きく文句を言うつもりはない。しかし、ちょっとだけ文句を言いたいのだ。何にも言わずにウニを3種盛り限定で売れば良いのではないかと思いますよ。この値段でウニを売るのがすごいのは間違いない。

鮨屋の人気者はいくらだろうと言われると、そうですねと答える。ただ、個人的な嗜好では筋子なんだよね、と言いたい。回転寿司ではあまり見かけないネタだ。北海道のタチの鮨屋ではよく見かける。いくらよりもしょっぱいが味のねっとり感は強い。個人的にはうまい鮨でお気に入りだからスシローでも定番にして欲しいと思う。
ただ、一皿二個乗り、均一100円という低価格回転寿司からすると、一個売りで150円とは3倍高いネタということになる。色々と理由があるのだろうが、これまでやってきた、ネタにソースやトッピングを載せてバリエーションを出すという手法では、100円均一を守りきれない状況になったのだろう。イカの明太乗せとか、タコのしそジュレソースとか炙りアジの生姜だれみたいな手法が通じなくなったようだ。
それでも、定番は一皿100円から離れた値付けはしたくないので、一個150円というのが苦肉の策で対応していると勝手に思っている。昔からの繁華街にある回転寿司では皿の種類が10種類近くもあり、皿と枚数では計算が難しい。この売り方は何だか不便だなあと思っていたが、大手回転寿司もその世界に入り込んできたみたいだ。
チェーン店理論で言えば、これは業界的には末期で、またワンプライスの価格破壊者が出てくる前段状態になったとも言える。アフターコロナで、最強生き残りグループの回転寿司を超える新業態が生まれるのかどうか興味津々だ。

回転寿司大手ではすっか英主力商品化したラーメンなどの麺類だが、これも色々と問題は抱えている気がする。一番の課題は厨房から出たての商品が届くはずなのに、スープがぬるいという温度問題だ。これは純然とオペレーションを調整すべきだろう。スシローは回転レーンに乗ってやってくる。くら寿司は従業員が持ってくる。(今はコロナのせいで変わったかもしれないので後日確認しよう)
ただし、くら寿司のラーメンはスシローより100円以上高いので、その辺りが微妙なのだ。それで今回の一番のびっくりは、「魚介だしの北海道味噌ラーメン」。魚介だしのスープは印象が薄い。びっくりの原因はトッピングで、何とフライドポテトと筋子とホタテフライがトッピングされている。赤い筋子の見た目で、最初はチャーシューだと思ったのだが、食べたらしっかり筋子だったので、超びっくりだ。フライドポテトは炭水化物に炭水化物という、コテコテ系の合わせ技だし。
これと同じ作り方、トッピングでラーメン専門店が作ってくれたら・・・と想像してみた。何だかものすごく美味しいものになるような気がする。スシロー傘下でラーメンチェーン作ってくれないかなあ、などと寿司とは全く関係ないことに感動した。
回転寿司が、「すし」産業からどんどん離れていっているのは、外食産業として進化と呼ぶべきだろう。ただし、すしやとしては変質だ。たちの鮨屋が、鮨屋が発祥した東の地平線にあるとすれば、回転寿司は西の地平線の方へ全力疾走している感じがする。もうすぐ、すし世界の地平線を超えた新天地に行くつもりなのだろうか。味噌ラーメンのスープに沈んだコーンを摘んで食べながら、そんなことを考えてみた。