
埼玉県飯能市に開いたスーパーヤオコーの低価格業態実験店フーコットを再訪してきた。前回行った時に気になっていた惣菜コーナーをもう少し見てみようという意図がある。別に惣菜評論家でもないから、文句をつけに行ったわけではない。最近大流行のsnsデマ流しになるつもりもない。
ここ数年間、スーパーの惣菜売り場が進化を続けていると思う。2年前までの流行りといえば、大皿に盛り付けた色とりどりの惣菜をビュッフェスタイルで取り分けるというものだった。米国流の惣菜進化を取り入れたものだというのが自分の理解だった。それまでのパック商材とは異なり華やかさと豪華さがある。レストランとも対抗できる品質と品揃えが浸透していた。
ところが、昨年来のコロナ感染拡大の中、コロナ対策として全商品がパック詰めされるようになり惣菜売り場は実に無味乾燥なものに逆戻りした。おそらく、もう数年間はこのパック詰め商品の時代が続くだろう。そうなると、パッケージの改良、陳列台の工夫、提供商品の見栄えなど、新しい突破口を探る実験が必要になる。高価格帯スーパーでは比較的挑戦しやすい課題だが、低価格帯店舗ではそれをどう対応するかによって、業績が左右されるくらいの重要性があるのではと思った。
という論点で、比較対象商品として追跡しているのが焼成済みピザとコロッケだ。ピザはMサイズ 25cm程度、500円前後での販売が多い。コロッケは大別して一個50円で売る店と100円の店に分かれる。コロッケは食べ比べてみてわかるが、値段が高い方がうまいとは限らない。というより、かかくによる味の差はほとんどない。
目玉商品として価格を下げるが、コロッケでは儲からないと割り切って売るか、原価計算に合わせかつ、値ごろ感にあわせて100円で売るかという、戦術的な違いだろうと推測しているのだが。ちなみに肉屋のコロッケ的な惣菜店では、値段に応じた味の差が存在するので、このコロッケ価格法則はスーパーの価格哲学みたいなことを推し量る目安にしている。
安売りスーパーの王者オーケーでは600円で売られていた照り焼きチキンピザが、この店では550円だから、やはり「価格を下げる気合い」がはっきりと見えている。ヤオコー本体よりも安いのは間違いない。ちなみに埼玉県中心のマミーマートも同じような値段だが、頼めば焼き立てを売ってくれるという「付加サービス」がある。たかがピザ、されどピザという感じだ。

今回の発見は鳥の半身揚げだった。鳥半身の唐揚げというものはあまり広まっている惣菜とは言えない気がするが、その価格が破壊的だった。だいたい鶏肉の半身相当の重量で唐揚げやグリルチキンなどを買う時に、1000円前後の値付けが多い。お値段高めと評価される典型的な米国発フライドチキンチェーンでは5個がほぼ半身分に当たるが、1200円程度なので、この499円という価格設定はすごい。ちなみに、北海道札幌周辺では鳥の半身揚げの専門店が多くあり、そこでも半身の価格は1000〜1200円程度だ。埼玉と北海道の物価格差を合わせると、この500円を切る値付けはすごいことだ。この半身揚げの周りには鳥の唐揚げも2種類が山盛りになっていたので、半身上げが一推しということではないだろう。おそらく実験商品という位置づけではないか。

実際に食べてみると、ブロイラーの素揚げなので肉は柔らかい。表面に塩と胡椒その他で味付けはされている。肉の裏面に火通りのための筋を切った跡は見当たらないので、筋切りの前工程はなしでゴロンと半身をそのまま揚げたということらしい。個人的な感想では、普通にうまい、だった。自分の家にある調味料を適当につけて食べればもっと味変が楽しめる、そういう素直な味付けだ。この低価格で辛いとか甘いとかの変化、バリエーションで複数フレーバーを販売する必要はない。だからシンプルな味付けで良いと理解した。低価格店での惣菜は廃棄ロスを考えると、品種の絞り込みは必須条件で、通常の食品スーパーのような多品種展開は不要だと思う。
などなどとちょっとだけプロ意識を働かせながら、あれこれ考えてみたが、最後は自家製越年三升漬け(タバスコソースより辛くなり過ぎてしまったもの)をつけて、ビールごくごくしながら食べた鶏の素揚げは、いとましでありました。有名フライドチキンにまけないうまさでございます。