
久しぶりに釧路駅から特急で札幌まで移動することにした。楽しみといえば駅弁に決定と思い込んでいたら、なんとお目当ての鯖と鰯のほっかむり寿司が売り切れ。予約しておけば取っておいたのにと販売員の方に言われたが、後の祭りだった。エビやカニの弁当はあるのだが、どうもそこには興味がいかない。ちょっと頭を冷やすため駅の中を彷徨いてみたら、おやきの店を発見した。

世間で二番めにオイシイと言われても、一番はどこなんだと突っ込みたくなる、おもしろ系看板。ここは以前は喫茶店だったのではないかと思うが、記憶が定かではない。ずっと昔には本屋だったような気もする。
さて、「おやき」とは北海道では今川焼き、大判焼きのような物を指す。たい焼きが丸くなった、中にあんこやクリームが入った例の焼き菓子だ。北海道語だと信じていたが、某県民紹介番組で青森の言葉だと解説されていた。へー、と思っていたが、青森からの移民に伴い北海道でも「おやき」が定着したらしい。ザンギとおやきは北海道ごと確信していただけに、ちょっと意外な気もする。この店の向かいはコンビニ店になっていた。キオスクはすっかり土産物屋に変わっていた。釧路駅の中は自分の記憶にあるものと全く変化していた。10年ぶりだったしなあ。

釧路駅は改札口を入ると、地下通路で隣のホームと繋がっている。昔の札幌駅もそうだった。確かに冬を考えると、線路上の橋では寒いだろうな、と妙に納得する。根室方面、網走方面にはこの地下通路を渡った隣のホームから発車する。一番ホームは札幌行きの特急専用みたいだ。

釧路で買うはずだった、2個の駅弁のうちの一つが、この牡蠣の駅弁。一つは車内で食べ、もう一つは晩飯にするはずだったのだが。残念ながらいわし・サバは売り切れで、まぼろしの弁当になってしまった。次に釧路に来る機会があるかどうか考えると、本当に幻になりそうだ。やはり、若い頃にしっかりと試しておくべきだったと後悔したが、それもだめオヤジのぶつぶつになってしまった。

牡蠣の出汁で炊いた味付きご飯の上に、牡蠣が6個乗っているだけという極めてシンプルな見栄えだ。付け合わせも本当にお印程度の卵焼きと漬物なので、まさにこれは牡蠣ご飯を食べるだけの豪速球弁当だった。名物駅弁にはこのパターンが多い。山形の牛肉ど真ん中とか、広島の穴子弁当もこのシンプルのっけご飯パターンだが、どちらもうますぎるくらいうまいので不動の定番人気弁当だ。
うまい駅弁をまた食べたいと思っても、その街を訪れる機会がなければ食べるチャンスはほとんどない。百貨店で開催される駅弁大会や地方物産展に僅かな期待をかけるのがせいぜいだろう。よほど親しい知人がいれば「東京に来る際に買ってきて」と頼むこともできるが。都合よく知人が好物駅弁の街に死んでいることなど、まさしくレアケースで、まぐれでしかない。
一期一会とは駅弁のためにあるような言葉だなあ、などと牡蠣をつまみにビールを飲んでの感想だ。この弁当は、是非また食べたいのだが、駅弁大会にでてきてくれるかな。