
えびそばと聞くと、塩味のラーメンに炒めたエビがばらっと乗っている光景を思い出す。東京の中華料理屋で、これが名物だと勧められて食べたが、あまり感動もせずに終わった。東京の名物ってこんなものかと言う、残念感が強かった。以来、中華料理屋でえびそばなるものがメニューにあっても、全く興味がわかないまま数十年(笑)たった。個人的感想なのだが、東京人はエビに対するリスペクト度合いというか、偏愛ぶりが甚だしいような気がしている。たかがエビになぜそんな有り難みを感じる?と言うのが素直な気分だ。ちなみに生まれ育った北海道ではエビが安いせいだろうとは思う。エビは高級品ではない地方なのだ。
ところが、10年ほど前に北海道で行列ができるエビそばの店があると聞いたが、ふーんと思いつつしばらく放っておいた。エビがどうした、と言う気分だった。それでも多少は気になっていたので、すすきので飲んだ帰りに立ち寄ったいつものラーメン屋が満員だったせいで、ふとえびそばを食べに行ってみようかと思った。ススキノの真ん中から5分も歩けばたどり着く、ススキノの外れにその店はあった。夜にもかかわらず待ち客がいたのはちょっと感心した。

豚骨とエビスープの合わせたものに、平打ち麺という、ちょっと変わったラーメンだった。魚介出汁と豚骨のWスープが本格的に広まり出した頃で、魚介出汁の代わりにエビを使ったのかと思った。まあ、ありがちなちょっと趣向の変わったラーメン、などとお気楽に考えていたが、一口食べて認識が変わった。「海老」のうまさはラーメンに合う。多分、海老出汁だけでは生臭くてうまいスープにならない。豚骨という動物系の合わせスープが生み出す調和というかイイトコ取りだ。
麺が選べたり、スープの海老出汁の強弱が選べたり、細かいところも調整可能なのが良い。ラーメン作りに「計算が行き届く」という表現が適切かとは思うが、まさに計算尽くされた一品という感じがした。以来、機会があれば足を運ぶ好みのラーメン屋になった。千歳空港のラーメン店街ではダントツの行列の長さで人気ぶりが知れる。今や、札幌を代表するラーメン店だが、そろそろ次の一手を見せてくれないだろうか。期待してるのでありますよ。