
最近は出歩くことが減っているので、街で何が起こっているか、どんどんわからなくなっている。これは商売がら、ちょっと困ったことになるぞとは思うのだが。そんな「知らなかった」ことの一つが、この大衆酒場の復活だ。開き戸を開けるとカウンターがあり、丸椅子があり、安い酒と魚を目当てに常連客が集まる、みたいな感じだ。店舗の外観は昭和中期の大衆酒場を再現したかんじになっている。横浜のラーメン博物館を路面に引っ張り出してきたような感じだ。スシローが展開している寿司居酒屋は、その流行をバシッと引き当てたヒットコンセプトだと思う。が、当然それをコピーする商売も広がるわけで・・。今や、あちこちで寿司、天ぷらを中心においた大衆酒場風の店が大増殖し始めている。焼き鳥ではなく、寿司天ぷらを中軸に置くのは、当然ながら単価を高くするためだ。魚居酒屋は多店舗化が進みすぎると、魚の仕入れに障害が発生すると言われているが、成長途上ではあまり心配することはない。

この店は有名居酒屋チェーンの実験店なのだと思うが、コロナの拡大時期に開店したので、おそらく実験検証が難しいのだろう。もうしばらくメニューの開発、実験が付くような気がする。そして、今回試してみたのが寿司でもなく魚でもなく天ぷらでもない肉料理だ。「トンたん」も最近あちこちの居酒屋で目にすることが多い。ごま油と塩で食べるとんたんは臭みもなく、「あり」な食材だ。冷たいまま提供できるのもメリットがある。

名物塩煮込みがおすすめらしいので、それも注文してみた。寿司と天ぷらの店なのだから、煮込みといっても魚のアラ煮のようなものだと、勝手に思い込んでいたが、出てきたものは普通の内臓肉煮込みだった。モツ入り?、ありゃりゃ的な驚きもあったが、それはこちらの勝手な誤解で思い込みだからお店の所為ではない。ただ、これを名物にするってのはどうかなあという気もする。

杉玉で見た舟盛り丼みたいなものを期待していただけに、普通の大衆居酒屋的なメニューで攻められるとちょっと違和感がある。このあたりが、まだまだ実験途上ということだろうか。店内はコンビニ級の明るさで席も広めであり、女性も入りやすい。大衆居酒屋特有の昭和演歌的な薄暗さはないのが良いところだ。ただ、もう少しメニューの方向を絞り込んで、寿司と天ぷらを追求するのが良いのではないかと思う。実験店はあれこれ試すのが目的だから、それも仕方がないのかもしれないが。隣に杉玉などの競合居酒屋が開店したらどうなるか、という想像をしてみた。血みどろのバトルになりそうだ。居酒屋もコロナで痛めつけられて、次世代の戦闘が始まるわけで、そのための新技術開発競争はますます激しく続くのだろうなあ・・・。