街を歩く

ノスタルジー・マーケティングの実践例 昭和な光景のラーメン屋

ノスタルジーマーケティングという考え方が流行っていたのは、多分2000年代中盤くらいだったような記憶がある。
単純に言えば1950−60年代生まれの層が(当時はおっさん、今やジジイ、女性もいるがそこはポリコレ的に遠慮して)、制作現場で親分になって行った時期にあたる。自分たちの世代が懐かしがるようなものを使えば、共感が得られやすいといういささかさもしい根性があったと睨んでいる。
自分たちが小中学生だった頃のキャラクターがやたらとCMに出てきた。ウルトラマンや仮面ライダーのようなシリーズ化されて連綿と続くキャラクターではなく、ある時期だけ流行っていたようなもの。例えばアニメキャラではガッチャマンであり、スーパージェッターだった。これはリアルタイムで見ていない世代からすると???、これ誰って感じだったのではないか。
楽曲でもナツメロというかリバイバルというか、サザンオールスターズや松任谷由美など今でも現役のアーティストの極々初期にリリースされた物を焦点に当てると言った技だ。

ディテールに凝る;チャンネルガチャガチャまわしのテレビが必須、あと電話機は黒にしないとね

昭和中期を懐かしむ世代を引きつけ、あわよくば平成生まれには「なに、あれ?」的な興味を植えつけようという手法だと理解していた。昭和レトロという言葉の前には大正レトロという言葉もあったような記憶があるが、大正時代をリアルに生きていた方達はもはやほとんどいらっしゃらないので。だから、マーケティング的に「表象」として使える時代は昭和40−50年代という、平成にはまだまだ早くて遠いという時期だった。

まあ、そういう時期の「茶の間」と言われた空間を再現して見せたのが、ラーメン屋というのもまた面白いが。当時はまだ茶の間という言葉は常用語であったし、リビングルームなどという言葉は新興勢力だった。電話はだいたい玄関か茶の間のどちらかに置かれていて、プッシュホンは普通に使われてはいなかった。ダイアル式電話が主流の頃だ。(30歳以下の人たちはダイアル式電話の掛け方はわからないだろう)
テレビは筐体が大きく、映りが悪いときはどんどんと叩くとなぜか映りが良くなったりした。ちゃぶ台は、インテリアではなく必需品だった。北海道ではまだ石炭ストーブが現役だったし、ストーブの上には大きなヤカンが乗っているのが常識だった。(蒸発皿という原始的な加湿器も使われていた)

というような光景を見て、ホホウと感心するのは今や高齢者しかいないはずだが、こういう場所に孫を連れてきて昔話をするというのは、それなりに説得性がある。コミュニケーションツールとしては効き目がありそうだ。

ディールにこだわる:当時のランドセルは調達が難しいだろうが椅子と机は本物に

まるで小学校の教室のどこかから持ってきたような、ランドセルのかかっている椅子と机も、ああ、確かに当時はこうだった。教室にランドセルを置く整理棚みたいなものはなかった。個人の持ち物は全てランドセルの中で入っていた。

ディテールも凝る:スープの表面の脂はラードが望ましい

こういうノスタルジーを誘う内装の店だから、ラーメンも昭和40年代の世界観から一歩も外には出ない。北海道的な当時の標準形ラーメンとは、鶏ガラベースのスープ、カンスイをつかった縮れ麺、赤い渦巻のナルトとシナチク(メンマ)、そして固くて薄いチャーシューだ。当然ながら無化調などというはずがない。たっぷりと旨味調味料が入っていた。
この店で現代風にWスープだ、節系だと言われても、逆にちょっと困惑してしまう。
やはり全体の景色を壊さないほうが良いのだ。商品も含め、まさしくフーテンの寅さんが実在していた時代と思わせてくれればいい。

平成世代には、まるで時代劇を見るようなものかもしれないが、それはまた違ったギミック溢れる世界として喜んで貰えば良いのだ。ただし、その雰囲気を楽しむためには、昭和時代の解説者というか、説明があった方が良い。昭和の風景を理解するためには情報を受け取れること、注釈が必要だろう。

ノスタルジー空間は、リアルで体験した世代とその後継世代が上手に楽しめれば、あざといアイデアで怪しげな世界を構築するよりも、共感が得られやすいことは確かなのだ。だから、ここしばらくは(後期昭和世代が生きている間は)ノスタルジーマーケティングの効果は十分活用できるレベルにあると断言する。
そして「食べ物屋」は、その昭和体験・実体験が簡単に行えるので(実食すれば良いだけ)、もっと有効だろう。
ただし、ディテールの凝り方を間違うとインチキ扱いされるので時代考証は綿密にすることが必要だ。

といろいろごたくを並べてみたが、この店のラーメンはとても好みで、何度も通ってしまうラーメン屋ということなのだ。新札幌駅隣のショッピングビル「サンピアザ」の地下にある。興味がある方は検索「新札幌駅 ラーメン屋」してみればすぐ分かるはず。

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